東京国際空港には、他の空港では見かけない「ROVER TWO A DEPARTURE」や「BEKLA TWO B DEPARTURE」など、数字の他にアルファベットのついたSIDがあります。
それぞれのSIDの使い分けや出発滑走路について解説します。
この記事では06:00~23:00の間に出発する航空機に適用される「日中運用」について解説します。
深夜運用については別の記事で解説しています。
SIDの番号が省略されている場合があります。
GUSRO ONE DEPARTURE → GUSRO DEPARTURE
ROVER TWO C DEPARTURE → ROVER C DEPARTURE
A/B/Cが省略されている場合はA/B/Cすべてに適用されます。
ROVER TWO A/B/C DEPARTURE → ROVER DEPARTURE
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SIDの使い分け
東京に限った話ではありませんが、目的地によってSIDが異なります。
Change of Flight Planned Routesに公示されているルートを元に表を作成しました。
SID | 経由FIR・目的地 |
ROVER DEPARTURE
―BRUCE TRANSITION
|
ハバロフスクFIR[UHHH](CHE経由)
RJCx, RJEx, RJSx
|
ROVER DEPARTURE
―AKAGI TRANSITION
|
ハバロフスクFIR[UHHH] |
ROVER DEPARTURE
―INUBO TRANSITION
|
アンカレッジ・オーシャニックFIR[PAZA]
オークランド・オーシャニックFIR[KZAK]
|
BEKLA DEPARTURE |
仁川FIR[RKRR]
RJNx, RJGG, RJOC, RJOH, RJOR, RJOW
|
GUSRO DEPARTURE
TIARA DEPARTURE
|
RJFF, RJFU, RJOA |
NINOX DEPARTURE |
仁川FIR[RKRR](A593/上海FIR方面)
北部九州(RJFO, RJFR, RJFS, RJFT)
RJBE, RJDC, RJOB, RJOI, RJOM, RJOT
|
LAXAS DEPARTURE |
台北FIR[RCAA]
マニラFIR[RPHI]
沖縄(ROAH, ROIG, ROKJ, ROMY, RORS)
RJBB, RJBD, RJFK, RJFM, RJKA, RJOK, RJOO, RJOS
|
VAMOS DEPARTURE |
オークランド・オーシャニックFIR[KZAK](B586経由)
RJTH
|
RUTAS DEPARTURE | RJAA |
xには任意のアルファベットが入ります。
ただし、東京からの定期便が存在しない空港はこれに当てはまらない可能性があります。
上表にないSEKIYADO・VADAR(for PROP only)・ISOGO DEPARTUREは民間定期便に対しては使用されません。
OPPAR DEPARTUREは深夜運用で使用します。詳しくは深夜運用の解説記事をご覧ください。
RWY34Lから離陸するHUMMINGBIRD DEPARTUREは2019年3月をもって使用されなくなり、のちに廃止されました。
1?2?3?
2023年3月の改正でRITLA TWO A/B/C DEPARTUREが廃止され、ふたたび数字がややこしくなりました。
1がつくSID
TIARA ONE A/B/C DEPARTURE 新規
GUSRO ONE DEPARTURE 新規
2がつくSID
ROVER TWO A/B/C DEPARTURE
BEKLA TWO A/B/C DEPARTURE
RUTAS TWO DEPARTURERITLA TWO A/B/C DEPARTURE 廃止
3がつくSID
NINOX THREE DEPARTURE
LAXAS THREE DEPARTURE
VAMOS THREE DEPARTURE
A?B?C?
ROVER DEPARTURE、BEKLA DEPARTURE、TIARA DEPARTUREの3つのSIDは、騒音などの問題から、時間によってA/B/Cの3種類のSIDを使い分けています。

GUSRO DEPARTURE、NINOX DEPARTURE、LAXAS DEPARTUREなど、A/B/Cが入らないSIDは時間にかかわらず同じSIDを使用します。
図中Mid NightのSIDについては深夜運用の解説記事をご覧ください。
C DEPARTUREは15:00~19:00のうち約3時間使用します。
15:00~19:00の間であっても、RWY22/23を着陸に使用する場合はA DEPARTUREを使用します。
約3時間が経過したあとも同様にA DEPARTUREを使用します。
A DEPARTURE (従来どおりの運用)
使用時間帯
05:51~07:00
11:30~C DEPARTURE使用開始
C DEPARTURE使用終了~22:39
※C DEPARTUREが使用されない場合は11:30~22:39

従来より使用されている標準的な経路です。
都心の騒音を軽減するため、RWY34Rからの出発機はしばらくの間東京湾上空を飛行します。
RWY05からの出発機と接近するため、離陸できる時機に制約があります。
B DEPARTURE (北風新運用)
使用時間帯
07:00~11:30

RWY34Rからの出発機は荒川上空を飛行し、RWY05からの出発機と干渉せず離陸できます。
南風時はA DEPARTUREと同じ経路を飛行します。
C DEPARTURE (北風/南風新運用)
使用時間帯
15:00~19:00のうち約3時間

北風時はB DEPARTUREと同じ経路を飛行します。
南風時はRWY22も出発滑走路として使用するため、RWY16Rからの出発機は東に回ります。
RWY22/23を着陸に使用する場合はA DEPARTUREを使用します。
約3時間が経過したあとも同様にA DEPARTUREを使用します。
離陸滑走距離等の関係で北米・ヨーロッパ・トルコ行きはRWY16Lから離陸します。
ROVER C DEPARTUREのRWY16Lからの出発経路は、重量のある北米行きなどの出発機が、直下を飛行する到着機に接近することなく安全に上昇できるよう、A/B DEPARTUREと比較して東に迂回しています。
東京は南周り(大阪/福岡/那覇など)の出発機が多く、北回り(福岡一部便/新千歳など)の出発機が少なくなっています。
機数の多い南周りの出発機には出発専用の滑走路が設定されている一方で、C DEPARTUREやその他の北風運用において機数の少ない北回りの出発機は、便数の少ない北からの到着機と滑走路を供用しています。
C DEPARTURE使用時においては、機数の多い西からの到着機がRWY16Lを使用し、北からの到着機と北回りの出発機はRWY16Rを使用します。
TIARA DEPARTURE?GUSRO DEPARTURE?

2023年3月23日の改正でRITLA TWO A/B/C DEPARTUREが廃止されると同時に、TIARA ONE A/B/C DEPARTUREとGUSRO ONE DEPARTUREが設定されました。
TIARA/GUSRO DEPARTUREの終点から始まる航空路「Y20」を経由する航空機は、運航スケジュールが決定した時点で出発滑走路が割り当てられ、出発滑走路によって飛行計画経路が変わります。
出発滑走路 | 飛行計画経路 | 使用するSID | ||
北風 | 南風A/B DEP | 南風C DEP | ||
RWY34R/05 | RWY16L/R | RWY16R/22 | TIARA GUSRO Y20… | 未割り当て |
RWY34R | RWY16L | RWY16R | LAYER TIARA GUSRO Y20… | TIARA |
RWY05 | RWY16R | RWY22 | GUSRO Y20… | GUSRO |
事前に滑走路の調整を行っていない航空機は、上表の「TIARA GUSRO Y20…」を使用し、滑走路やSIDは飛行計画承認時に指定していると考えられます。
出発滑走路
東京には4本の滑走路がありますが、民間定期便の出発に使用されているのは16L/R、34R、22、05の5つです。
民間定期便に対して04及び23は使用していません。
経由地点/航空路や便、風向きや時間帯に応じて使用する滑走路が決められています。
GUSRO DEPARTURE、NINOX DEPARTURE、LAXAS DEPARTUREなど、A/B/Cが入らないSIDについても、C DEPARTUREの使用状況に応じて出発滑走路が変わります。
経由地点/SID/航空路 | 出発滑走路 | ||
北風 | 南風A/B DEP | 南風C DEP | |
ROVER, Y884, Y885 | RWY34R | RWY16L | RWY16R ※1 |
Y18 ※2 | RWY34R/05 | RWY16L/R | RWY16R/22 |
TIARA DEP ※3 | RWY34R | RWY16L | RWY16R |
GUSRO DEP ※3 | RWY05 | RWY16R | RWY22 |
Y28, Y56, XAC | RWY05 | RWY16R | RWY22 |
※1 北米・ヨーロッパ・トルコ行きはRWY16Lを使用する
※2 運航スケジュールが決定した時点で出発滑走路が割り当てられる
2023年3月現在、/のあとの滑走路(北風05/A/B16R/C22)は定期旅客便に割り当てられていない
※3 TIARA DEPARTURE・GUSRO DEPARTUREともにY20に接続するSID
運航スケジュールが決定した時点でSIDが割り当てられる
また、北米・ヨーロッパ・トルコ行きと深夜帯を除いて、原則滑走距離2500m以内で離陸できる必要があります。
VATSIMでの運用
この項目では、フライトシミュレータで管制官と音声による通信を楽しむオンラインコミュニティ「VATSIM」での運用について解説しています。
現実世界での運用とは異なりますのでご注意ください。
SIDについて
南風C運用(到着機がRWY16L/Rへの直線進入を行う運用)を行う場合は、時間帯にかかわらずC DEPARTUREを使用する必要があります。
A/B DEPARTUREを使用すると到着機と干渉してしまいます。
TIARA/GUSRO DEPARTUREの飛行計画経路について
事前に「Flightradar24」等で自身が飛行する便の出発滑走路を確認し、出発滑走路に合わせた飛行計画経路を提出することを強く推奨します。
たとえば、ANA243はRWY05から離陸しているため、飛行計画経路は「GUSRO Y20…」となり、GUSRO DEPARTUREが使用されていることが分かります。

同様に、ANA679はRWY34Rから離陸しているため、飛行計画経路は「LAYER TIARA GUSRO Y20…」となり、TIARA DEPARTUREが使用されています。

なお、15:00~19:00の間に出発する航空機は、南風C運用の実施状況によって出発滑走路が変わるため注意が必要です。
特にRWY16Rからの出発機は旋回方向によってSIDが異なります。
確認の際は下図を参考にしてください。

回送便や実在しない便で飛行する場合は、未割り当ての「TIARA GUSRO Y20…」を提出することをおすすめします。
出発滑走路について
SIDに合わせた出発滑走路を使用することを前提に経路が設定されてるため、管制官から指定されたSIDと本来使用される出発滑走路が一致しない場合は、SIDもしくは出発滑走路の変更を要求することをおすすめします。
なお、悪天時や滑走路閉鎖中など特別な状況においては、管制官があえて指定していることもあり、SIDや出発滑走路の変更等が認められない場合があります。
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