東京国際空港のような混雑空港ではプッシュバックの詳細な指示は日常茶飯事です。
VATSIMでもGSXの大型アップデートでQuickEdit Pushbackが使用できるようになり、プッシュバックを細かく指定されることが多くなりました。
東京におけるプッシュバックの一例を交信例・図とともに紹介します。
プッシュバックの要求
東京に限った話ではありませんが、プッシュバックを要求する際は以下の内容を通報しましょう。
- コールサイン
- SPOT番号
- ATIS情報
デリバリーが開局している場合(グランドへのイニシャルコンタクトの場合)はしっかりグランドの正しいコールサインをつけましょう。
プッシュバックする向き/場所
東京に限った話ではありませんが、プッシュバックの向きを指定されなければ出発滑走路の方向に、東西南北で指定されればその方向にプッシュバックを行います。
Pushback approved RWY16R. Heading South.
滑走路16Rに向けプッシュバックを許可します。機首は南に向けてください。
なお、第二ターミナル51番〜55番において南向きでのプッシュバックを指示された場合は、下図のように誘導路Rに入ります。
誘導路E上に南向きでプッシュバックさせる場合は後述する「South on E.」の用語が使用されます。独自研究
全空港共通
東京以外の空港でも使用されることが多い指示の例です。独自研究
Expect taxi via…
Pushback approved RWY16R. Heading North. Expect taxi via M-2.
滑走路16Rに向けプッシュバックを許可します。機首を北に向けてください。誘導路M-2からの地上走行を予期してください。
地上走行経路の情報を提供することでロングプッシュバックしてもらう指示です。
この指示を受けたら誘導路M-2から出れるようにプッシュバックしましょう。
Clear SPOT
Pushback approved RWY16R. Clear your SPOT, arrival coming.
滑走路16Rに向けプッシュバックを許可します。あなたのスポットに到着機が来ます。到着機が入れるスペースを用意してください。
到着機が出発機と同じSPOTにはいる場合に、そのスペースを確保してもらう指示です。
この指示を受けたらウィングスパンを考慮して当たらない位置まで下がりましょう。
同様に「Clear SPOT 62.」のように別のSPOTをクリアにするように指示されることもあります。
Clear taxiway
Pushback approved RWY16R. Heading South, clear W-9.
滑走路16Rに向けプッシュバックを許可します。機首を南に向け、誘導路W-9をあけてください。
Clear SPOTの誘導路版です。
この例では誘導路W-9を別の航空機が通れるようにプッシュバックしましょう。
東京特有のプッシュバック
東京特有のプッシュバックの指示の例です。独自研究
Heading North/South on E
Pushback approved RWY16R. Heading South on E.
滑走路16Rに向けプッシュバックを許可します。誘導路E上で機首を南に向けてください。
54~58、66~68番からのプッシュバックによく使われています。
on M-2
Pushback approved RWY16R on M-2.
滑走路16Rに向け誘導路M-2上までプッシュバックを許可します。
数機同時にプッシュバックする際に使われます。
onto R-1
Pushback approved RWY16R onto R-1.
滑走路16Rに向け誘導路R-1上までプッシュバックを許可します。
誘導路R-1上へのプッシュバックには「on」ではなく「onto」が用いられることがほとんどです。
プッシュバックレーン
SPOT33番から44番の後方にはプッシュバックレーン(Pushback-lane)が存在します。
以下のように、プッシュバックする場所を指定されなかった場合は誘導路W上ではなく、プッシュバックレーン上までプッシュバックします。独自研究
JAL213, Tokyo Ground. Pushback approved RWY05.
誘導路W上にプッシュバックする場合は以下のように指示されます。独自研究
JAL213, Tokyo Ground. Pushback approved RWY05. Heading South on W.
プッシュバックレーンから誘導路Wへ自走する場合、使用SPOT導入線とプッシュバックレーンの交点付近から、隣接SPOT導入線と誘導路Wの誘導路中心線の交点で会合するように走行します。公示あり
なお、管制官からプッシュバックレーンの走行を指示された場合は、プッシュバックレーンを走行し、地上走行補助線(図の「Auxiliary taxiing line」)に沿って誘導路に入ります。公示あり
JAL213, taxi via pushback-lane to W TWY.
JAL213, taxi via pushback-lane to J TWY.
同様にSPOT1番から5R番、69番から73番の後方にもプッシュバックレーンが存在しますが、チャートには公示されていません。
こちらも同様になにも指示されなければプッシュバックレーン上にプッシュバックし、誘導路上にプッシュバックすることは滅多にありません。
このプッシュバックレーンに関するプロシージャはAIPには公示されていませんが、航空会社等との協定があります。
以下参考程度にご覧ください。
1番~3番 東向き
3番~4番 西向き
68番~71番 東向き
70番~73番 西向き
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