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アプローチクリアランス

JAC2324, cleared for ILS RWY32L approach circle to RWY14L.
JAC2324、ILSでの滑走路32Lへの進入を許可します。滑走路14Lへの周回進入を行ってください。

JAC2324, cleared for ILS RWY32L approach circle to RWY14L.
「Cleared for ILS RWY32L approach」の部分は通常と同じです。この例では、計器進入に使用するのは32Lに設置されているILSですので、たとえ着陸滑走路が32Lではなかったとしても、32Lへの計器進入が指示されます。
その後ろに「Circle to RWY14L」と来ているのが着陸滑走路の指示です。これによって指定された滑走路以外への着陸は許されません。
滑走路が指定されていないIAPの場合は、Circle to RWYの用語は使用されません。その場合、ATIS記載の着陸滑走路、または事前に通報された着陸滑走路へ進入します。
着陸滑走路を改めて指示したい場合は、Circle toを用いずにアプローチクリアランスに情報を付与することがあるようです。

ANA105, cleared for VOR A approach RWY16L.
ANA105、VOR Aによる進入を許可します。着陸滑走路は16Lです。

Cleared for VOR A approach RWY16L, ANA105.
アプローチクリアランスを受領したあとは、通常どおりタワーにハンドオフされます。
ブレイクのリポート

Osaka Tower JAC2324, over MIDOH, landing RWY14L.
大阪タワー、JAC2324です。MIDOHを通過、着陸滑走路は14Lです。

JAC2324 Osaka Tower, RWY14L, report left break.
JAC2324、大阪タワーです。滑走路14L、左旋回を開始したら報告してください。

Report left break, JAC2324.
タワーとの交信であまり聞き慣れないのが「Report left break.」です。これは「左旋回を開始したら報告せよ。」という意味になります。
もう少し詳しく説明しましょう。サークリングアプローチでは、途中で左または右に旋回して通常の計器進入のコースから外れ、目視にて着陸滑走路に向かいます。この「計器進入から外れる際の右/左旋回で報告する」のが「Report right/left break」というわけです。

このリポートには、到着機が計器進入コースを外れていくタイミングを明確に管制官に伝えるという意味もありますが、管制官側から到着機に対して「どちらに旋回すべきか」を明示することも出来ます。ほとんどのメンバーがアマチュアであるVATSIMにおいては、この指示により飛行コースを明示することで、ただでさえちょっと難易度の高いサークリングアプローチ中の混乱をある程度抑制することが出来るのです。
管制官から「Report right/left break」を指示された場合は、そのとき指示された方向に旋回してサークリングアプローチに入る必要があります。
ここで逆側に旋回してしまうと、トラブルの原因になりかねないのです。通常「Report ~.」の指示にあまり大きな重要性はないのですが、このように、場合によってはリポートの重要度が高くなることがあります。

Osaka Tower JAC2324, now left break.
大阪タワー、JAC2324です。左旋回を開始しました。

JAC2324, report right base RWY14L.
JAC2324、滑走路14L、ライトベースで報告してください。

Report right base RWY14L, JAC2324.

Osaka Tower JAC2324, right base RWY14L.
大阪タワー、JAC2324です。ライトベースに到達しました。

JAC2324, RWY14L cleared to land, wind 170 at 21.
JAC2324、滑走路14L着陸支障ありません。風170度21ノット。

RWY14L cleared to land, JAC2324.
飛行コースの交錯
サークリングアプローチにより、計器進入とは逆側の滑走路に離着陸している場合、到着機の飛行コースと出発機の飛行コースがもろに被ってしまいます。
上空を飛行しているときよりも航空機同士の間隔は非常に近づきやすくなりますので、「管制官の指示やチャートに従うこと」の重要性が高くなることに注意してください。
もっとも目視により飛行する部分については、基本的に管制官側で航空機を近づけないようにしています。VATSIMでは通常のトラフィックパターンと同じように、空港から半径5NM以内の空域に収まるようにベースレグに進入していけば問題ありません。
(厳密には周回進入区域というもっと狭い空間に収める必要があるのですが、VATSIM上ではそこまで気にしなくても大丈夫です。ただし大型機の場合でも、5NMは越えないように注意してください。)
また、出発機にも到着機を避けるための指示が発出されることもあります。離陸前のヘディングの指示が一般的かと思われますが、レーダーコンタクト時にヘディングが指示されたり、SIDのショートカットが指示されることもあるでしょう。
単なるショートカットと違い、指示に従わないと他機に接近してしまう恐れがありますので、聞き逃さないよう十分注意しましょう。
滑走路が見えないとき、滑走路を見失ったときの対応
勘違いされている方が多いのですが、サークリングアプローチでは滑走路が見えるまでは、計器進入のコースから外れて旋回を行ってはいけません。
周回進入(Circling approach)
管制方式基準 (Ⅰ)-2a 定義(1)
特定の滑走路へ進入を行い、飛行場又は当該滑走路を視認したのち目視による周回を行う進入をいう。
では、滑走路が見えないときはどうすればいいのか。
滑走路が見えるまでは通常の計器進入方式に従って進入を続け、MAPtに到達しても滑走路が見えなければ、ゴーアラウンドを行うことになります。
このとき、管制官からの指示があればそれに従うことになりますし、レディオ・リモート空港などでは、基本的にそれまで進入を行ってきた計器進入方式の進入復行方式に従うことになります。
またMAPtに到達する前に滑走路が見え、進入を継続中に滑走路を見失った場合も同様にゴーアラウンドを行います。
この場合も管制官からの指示に従うことになりますが、指示を得るまでは原則として、着陸しようとした滑走路の方向に向かって上昇しながら管制官の指示を待ちます。
しかしながらレディオ・リモート空港の場合は、進入許可にMAPt通過後のゴーアラウンドが想定されていないため、キャンセルIFRができなければ、できる限り速やかに上昇しながら、それまで進入を行っていた計器進入方式の進入復行方式に会合することが次善の策であるとAIM-jに記述されています。
コメント
こんにちは😃いつも楽しく拝見させていただいています。
勘違いかもしれないですが、質問です。
上記の記事にて「ゴーアラウンドを行う」旨の記載がありますが、この場合はミストアプローチではないのでしょうか?
記載のシチュエーションは、着陸復行ではなく計器進入をやり直すものかと思ったので。
ご教示頂ければ幸いです。
こんにちは。
コメントありがとうございます。
管制方式基準では、ゴーアラウンドは「着陸又はそのための進入の継続を断念して上昇体勢に移ること」、ミストアプローチは「進入の継続を断念し、公示された進入復行方式又は事前に通報された進入復行の飛行方法に従って飛行すること」と定義されています。
つまり、ゴーアラウンドは復行を行う位置を問わず、着陸や進入を断念して上昇に移る一連の操作と手順を指す一方、ミストアプローチはゴーアラウンド後の飛行方法の一種です。
MAPt到達前に進入を断念し、進入復行方式に従う場合でも、まずはゴーアラウンド[復行(Decision)]を行い、その後ミストアプローチ[飛行方法(Manuver)]を行うことになります。
またサークリングアプローチでブレイクを行った後は進入復行方式が原則として適用されず、管制官からヘディングや高度が指示されるため、管制管から進入復行の飛行方法を事前に指示されていない限り、ミストアプローチを行うことがそもそもありません。
一部の空港ではサークリング中に復行した場合の飛行方法が公示されていますが、これは進入復行方式とは違い進入許可に付随して承認されるものではなく、予測される管制官の指示を示しているものです。
したがって、本記事ではゴーアラウンドと記載しております。
余談ではございますが、現在ゴーアラウンドとミストアプローチに関する記事を作成中です。
具体的な公開日は決まっておりませんが、詳しくはそちらの記事をごらんいただければ幸いです。
pengin239様
KOMMYです。ご回答ありがとうございました。
GO AROUNDには侵入を断念する定義があるというのは、恥ずかしながら知りませんでした。
少し交信例ベースで考えてみたのですが、記事の例でPILOT側で飛んでいて、
・VOR-Aアプローチをしていて、
・MAPtでRWY In-siteできない場合は、
“GO AROUND”をコール、これで通じるということでしょうか。
(私の今までの考えでこのシチュエーションに置かれたら、”MISSED APPROACH”をコールしていたと思います。)
また、
・MAPt以前にRWY In-siteしてLEFT BRAKE、
・(便宜的に)RIGHT DOWN WINDでLOST、
・その後もRWY Visualできそうもない場合、
これもまた”GO AROUND”をコールする、で通じるということでしょうか。
自分(PILOT側)なりには、”RWY not visible, GOing AROUND” 等を通報し、上記記事に記載のとおり管制指示に従って飛行する、その際にTWRがHDG、ALTを指示(あるいは事前に指示しておく)してAPPに繋ぐ、という流れなのかなと想像しました。
今後の記事も楽しみしています。
ありがとうございました。
KOMMYさん
分かりにくい説明で申し訳ございませんでした。
管制方式基準のミストアプローチの定義には、「進入の継続を断念し、(後略)」という言葉が含まれており、両者の使い分けが漠然としておりますが、AIM-j(2020前期)690項及び第29回ATSシンポジウム研究発表「Go aroundとMissed approach」では一般にミストアプローチは「進入中またはMAPtにおいて復行を行った後、公示されたあるいはあらかじめ通報された進入復行の飛行方法に従って飛行すること」とされております。
本記事では原則として上記の解釈及びAIM-j 690~694項の表記に従っているため、ゴーアラウンドはすべてのフェーズでの復行、ミストアプローチはその後の進入復行方式に従った飛行方法であることを前提に、いかなる場合においてもゴーアラウンドで記載しております。
以前はゴーアラウンドは着陸復行、ミストアプローチは進入復行とされておりましたが、管制方式基準の定義が改定され、現在ゴーアラウンドは復行とのみ記載されています。
<VOR-Aのケースについて>
AIM-jに基づくと、まず復行の通報「ゴーアラウンド」に加えその後の飛行方法についてもパイロットが意図を伝える必要があります。
進入許可に付随し進入復行方式も承認されている為、MAPtで復行を行い進入復行方式に従った飛行をする場合、
「Going around. Missed approach.」
と通報することがAIM-jの解釈に最も合致すると考えられます。
しかしながら上記の場合において「Going around.」の通報をしなかったとしても、管制官に復行を行い進入復行方式に従った飛行するというパイロットの意図は「Missed approach.」の通報だけでも伝わるのではないでしょうか。(あくまで、素人の大学生の考えではございますが)
<周回進入中において、MAPtを過ぎた後の復行について>
これについてはKOMMYさんが仰るとおり、まず復行を行った旨を先に述べたとおり「Going around.」で通報することで事足りると考えられます。
ただし、MAPtを過ぎてからの復行は飛行方式としても、管制承認としても想定されていない為、この後の飛行をIFRで継続するには管制官の新たな指示(ヘディングや高度等)が必要です。
通常ゴーアラウンドの通報を行った際、ターミナルレーダー管制が行われているTWR空港においては、KOMMYさんの仰る通りの流れとなります。
よろしくお願いいたします。
Pengin239様
追加の解説までありがとうございました。
以前は着陸復行と進入復行の定義、言い換えれば「着陸のやり直し」と「アプローチのやり直し」だったとのことで、私の解釈が、まさにそれでした。
(個人的には以前の線引きの方が単純明快でわかりやすいのに、と思いました。)
SIM PILOT側の個人的、感覚的な部分を含めてですが、MAPt手前だとチャート通りのアプローチを射っている最中なので、たぶん“MISSED APCH“をコールしちゃいますね。それで通じるとのご見解ですので、一安心しました。
重ねてありがとうございました。
次の記事も楽しみにしています。
では。