平成30年(2018年)7月より、東京国際空港ではTSAT(Target Start Up Approval Time)運用が行われています。
TSATとは
TSAT(Target Start Up Approval Time)とは、航空機が移動開始(プッシュバック等)の許可を受領する目標時刻です。
TSATを用いて移動開始時刻を指定する運用のことを「TSAT運用」といいます。
地上走行時間の削減や、離陸待ちの渋滞緩和を目的とし、現在は東京国際空港と成田国際空港でのみ運用されています。
なお、この記事では東京国際空港でのTSAT運用について解説します。
成田国際空港のTSAT運用とは異なる場合があります。
TSAT運用の方法
RJTT AD 2.20 LOCAL TRAFFIC REGULATIONS 2.1に記載されている内容を要約します。
対象航空機
飛行計画上(フライトプラン上)の出発予定時刻「EOBT(Estimated Off-Block Time)」が6時20分から22時59分までの、すべてのIFR出発機に適用されます。
ただし、以下の航空機には適用されません。
- 航空交通流制御により、EOBTから60分以降のEDCTが指定された航空機。
※当該EDCT指定後に、EDCTが変更または取り消しされた場合も含む。 - 航空交通流制御により、出発の停止を指示された航空機。
TOBTの通報
運航者(Aircraft Operator/Ground Handler)はEOBTから5分以上の遅延が見込まれる場合、管制機関にTOBTを通報します。
通報したTOBTから5分以内に移動開始ができるよう準備し、移動開始ができない場合はその都度運航者はTOBTを通報します。
なお、TOBTの通報がない場合は、EOBTがTOBTとして取り扱われます。
EOBT
飛行計画上の出発時刻のこと
TOBT
航空機が管制機関からの許可があれば直ちに移動開始できる状況となる目標時刻のこと
TSATの通知
TSATは管制承認発出時(クリアランス発出時)に、音声通信またはデータリンクにより必ず通知されます。

SFJ75, Tokyo Delivery. Cleared to Kitakyushu Airport via NINOX THREE DEPARTURE flight planned route. Maintain FL200. Squawk 2224. TSAT 0021.
それに加え、VDGS(Visual Docking Guidance System)が設置されている場合は、原則TSATの20分前からVDGSに表示されます。
TSATに変更がある場合や、TSATが失効する場合には、VDGSにその旨表示されます。
VDGSが設置されていない場合や、使用できないことが周知されている場合において、管制承認発出後に運航者がTOBT変更入力を行った場合や、EDCTが指定または追加された場合は、新しいTSATが以下の方法で通知されます。
管制承認発出後に、運航者がTOBT変更入力を実施した場合
入力を実施した運航者が航空機へ新しいTSATを通知する。
管制承認発出後に、EDCTが指定または変更された場合
管制機関から航空機に新しいTSATが通知される。
TSATの取り消し
TSATが取り消される場合には、音声通信またはデータリンクにより通知されます。

SFJ75, TSAT cancelled.
移動開始
航空機は、TSATに移動開始を要求します。
TSATよりも早く移動開始準備が完了した場合は、TSATの3分前から移動開始を要求することができます。
VDGSが設置されている場合
VDGSに表示されているTSAT
VDGSが設置されていない場合または使用できないことが周知されている場合
管制機関または運航者より通知されたTSATのうち直近に通知されたTSAT
なお、TSATに移動が開始できない場合は、移動開始準備完了次第、すみやかに移動開始を要求します。
また、管制機関はTSATよりも前の時刻であっても、必要に応じて移動開始を指示することがあります。
管制機関よりTSATの取り消しを通報された場合は、VDGSに表示されているTSAT及び運航者から通知されたTSATにかかわらず、任意の時機に移動開始を要求することができます。
TSAT運用の中断
TSAT運用が中断される場合には、ノータムRJTTにより周知されます。
VATSIMでの運用
システム改修以前は、管制承認発出時におけるTSATの通知を、EOBTとTSATが同時刻の場合に限り省略することができたため、管制承認発出時にTSATをいわなくてもいい方法として紹介していました。
ですが、システム改修後はその一文が削除され、必ず管制承認発出時に通知することになりました。
イベントでもない限りTSATを必要とする状況はなかなかないでしょうし、関連機がいない場合においてはEOBTをTSATとして取り扱うのが一番楽な方法でしょう。
ですが、VRCからはフライトプランのDeparture Time(=EOBT)を確認することができません。
そこで、東京国際空港ではエンジン始動の5分前に管制承認を要求するようAIPに記載されていることから、管制承認要求から5分後をEOBTと解釈し、その時間をTSATとして通知するのがおすすめです。
この方法では、21時00分に管制承認を要求してきた航空機は、エンジン始動の5分前に管制承認を要求することから5分後をEOBTを解釈し、21時05分をTSATとして通知します。
上記二つの方法は、TSATを必要としない機数の場合にTSATを通知する方法ですが、イベントで多くの航空機が出発する場合などにおいてはTSATが大活躍します。
ExcelやGoogle スプレッドシートを用いて事前に準備しておくとスムーズに運用できます。
参考: 「Tokyo to Incheon」で運用した際のスクリーンショット
まとめ
編集履歴
2022/04/21
2024/01/06
2023年10月5日の改正で、SUPsからADに移行されたため、内容を反映しました。
- 成田国際空港での運用開始にあわせ、成田国際空港で運用されている旨を記載しました。
- TOBTの通報について、運航者が行うことを明記しました。また、運航者について詳細を明記しました。
- 表現をAIPに準拠しました。
旧: 通報したTOBTから、さらに5分以上の遅延が見込まれる場合は、その都度TOBTを通報
新: 通報したTOBTから5分以内に移動開始ができるよう準備し、移動開始ができない場合はその都度運航者はTOBTを通報 - その他一部表現を変更しました。
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