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関西の玄関口、伊丹空港こと大阪国際空港。
進入編では、STARや、各周波数・進入方式の解説など、APPでの流れをメインに解説します。
運用時間や注意点などは出発編をご覧ください。
なお、あくまでも現実世界の話であり、VATSIM上でこのとおりに運用されるとは限りません。
このページでは進入の流れを解説します。
標準交信例・解説
降下
交信例(1)
Kansai Approach, ANA1666. Leaving FL162 for 13000, with F.
ANA1666, Kansai Approach, roger. Recleared direct IKOMA. Maintain 13000.
Recleared direct IKOMA, maintain 13000. ANA1666.
STARは使わない?
KODAI及びROKKOを経由する到着機は、IKOMAまで提出するようAIPに公示されています。
そのため、IKOMA EAST ARRIVALやIKOMA NORTH ARRIVALは使いません。
ですが、IZUMI経由の到着機はIZUMIから、HABIK ARRIVALを使う必要があります。
近年ではほとんどの航空機がRNAV1に対応しているため、KODAI ARRIVALやIZUMI ARRIVALもほとんど使わなくなっています。
つまり、大阪には合計5つのSTARがありますが、基本的に使用するのはHABIK ARRIVALだけということになります。
STAR | 始点 | 終点 | 備考 |
---|---|---|---|
IKOMA EAST ARRIVAL | KODAI | IKOMA | RNAV1 |
IKOMA NORTH ARRIVAL | ROKKO | IKOMA | RNAV1 |
HABIK ARRIVAL | IZUMI | IKOMA | RNAV1 |
KODAI ARRIVAL | KODAI | IKOMA | |
IZUMI ARRIVAL | IZUMI | IKOMA |
すべての直行経路を入力せずとも、STARと同じルートですので適切なSTARを選択するなどして確実にFMCに入力するようにしましょう。
着陸滑走路
大阪国際空港には長短2本の滑走路があり、航空機ごとの使用滑走路についてはeAIP RJOO AD 2.20 LOCAL TRAFFIC REGULATIONS 1-2に記載があります。(下表は2020年8月現在)
滑走路 | 着陸 | 離陸 |
---|---|---|
RWY14L/32R | ・最大離陸重量が79,243kg以下の航空機 A320、DH8D、E170、E190、CRJ700等 | ・B735 ・最大離陸重量が34,500kg以下の航空機 DH8D、E170、ATR42、ATR72、CRJ700等 |
RWY14R/32L | ・B738、B737、B735 ・最大離陸重量が79,243kgを超える航空機 B763、B772、B773、B77W、B788、B789、A321等 | ・最大離陸重量が34,500kgを超える航空機 B738、B737、B763、B772、B773、B77W、B788、B789、A320、A321、E190等 |
到着機はA滑走路(RWY14L/32R)対応機でも管制が積極的にA滑走路をアサインすることは少なく、パイロットのリクエストにより使用することがほとんどです。
進入方式(32運用)
大阪国際空港には全部で5種類の計器進入方式があり、どれかを使えばRWY32LもしくはRWY32Rに直線進入が可能となっています。
設定されているIAPとその始点は表の通りです。
IAP | 始点 | |||
---|---|---|---|---|
ILS RWY32L | IKOMA | |||
LOC RWY32L | IKOMA | |||
RNP RWY32L | IKOMA / GAMBA / CEREZ / KOSAK | |||
RNP RWY32R | IKOMA / GAMBA / CEREZ / KIKYO | |||
VOR A | IKOMA |
ILS RWY32L APCHはRWY32Lへの直線進入のほかに、Right BreakしてRWY32Rに周回進入を行うのにも使われます。
これらのほかに、北からの到着機はRWY32Rへビジュアルアプローチを行うこともあります。
ATISにはILS RWY32L APCHのみ記載されているため、他の進入方式を要求しなかった場合や、指示されなかった場合は、ILS RWY32Lとなります。
そのため、着陸滑走路や進入方式はイニシャルコンタクトで要求しましょう。
Kansai Approach, JAL2250. Leaving FL204, for FL170. Information S. Request RNP RWY32R.
JAL2250, Kansai Approach, roger. Expect RNP RWY32R approach.
RWY32運用時にILS RWY32L APCHの直線進入以外の進入方式が予定される場合は管制より通報があります。
JAC2324, Kansai Approach. Expect ILS RWY32L approach circle to RWY32R.
リクエストがない場合は原則RWY32Lになりますが、混雑時など初めから管制側がRWY32Rをアサインする場合、予期すべき進入方式としてILS RWY32L APCH circle to RWY32Rを通報することが多いようです。
進入方式(14運用)
RWY14L/Rには直線進入ができないためILS RWY32L APCHからの周回進入を行うことになります。
その際ATISにはこのように記載されます。
(APCH)ILS RWY32L
USING RWY 14L/14R
KANSAI DEP FREQ 119.5,
INFORM YR LDG RWY TO OSAKA TWR ON INITIAL CTC.
CIRCLING APCH INPR.
着陸滑走路は違いますが、ILS RWY32L APCHに乗せるのは32運用時と同じなので、関西APPはほとんど同じことをおこなうと思われます。
稀にRNP RWY32L APCHからの周回進入を行うこともあります。
14運用時の関西APPについては資料が少なく完全な運用な把握ができていません。
直行指示
北(ROKKO)からの到着機はOTABE、東(KODAI)からはIKOMA、南(IZUMI)からはHABIKへの直行指示がイニシャルコンタクトでよく出されます。
Kansai Approach, ANA778. Leaving 13000, descending to 11000. Information Q.
ANA778, Kansai Approach, roger. Recleared direct OTABE.
南からの到着機は関西アプローチ(FREQ:120.45)での発出になります。(南からの到着機の流れは交信例(2))
Kansai Approach, ANA786. Leaving 12000 for 11000.
ANA786, Kansai Approach. Cleared via HABIK ARRIVAL. Recleared direct HABIK. Maintain 11000.
直行指示を出したあとは交通状況やMVAを考慮しつつ降下指示を出していきます。
交信例(2)
関西ディパーチャー(FREQ:119.2)
Kansai Departure, JAL2404. Descend 190, we have Osaka G. Request RNP 32R approach.
JAL2404, Kansai Departure, roger. Expect RNP RWY32R.
Roger.
JAL2404, reduce speed to 250kt and descend and maintain FL170.
JAL2404, reduce 250. Descend 170.
JAL2404, descend and maintain FL150.
JAL2404, descend and maintain FL150.
JAL2404, descend and maintain 11000.
JAL2404, descend and maintain 11000.
JAL2404, contact Kansai Approach 120.45.
JAL2404, 120.45.
関西アプローチ(FREQ:120.45)
Kansai Approach, JAL2404. Descend 11000.
JAL2404, Kansai Appraoch. Cleared via HABIK ARRIVAL. Descend and maintain 6000.
JAL2404, cleared via HABIK ARRIVAL. Descend 6000.
南(IZUMI)からの到着機
南からの到着機は福岡コントロールから一度関西発メインの関西ディパーチャー(FREQ:119.2)にハンドオフされます。
その後、KAINA手前あたりで関西アプローチ(FREQ:120.45)にハンドオフされます。
119.2へのイニシャルコンタクト
イニシャルコンタクトではパイロット側はATISの受領報告、滑走路や進入方式のリクエスト、管制側はATISと異なる場合は滑走路や進入方式の通報など一般的なアプローチへのコンタクトと同じことを行います。
伊丹到着機に対しては一般的なAPPと同じ業務を行いますがコールサインは「Kansai Departure」です。
関西ディパーチャーのお仕事
福岡コントロールからはFL190への降下指示を出した状態でハンドオフされてきますので、トラフィックに注意しながら11000まで降下指示を発出します。
交通状況によってはIZUMIへの直行やKAINAへのレーダーベクターも行われます。
JAL2386, fly heading 270 for spacing. Vector to KAINA.
関西アプローチへは11000までの降下指示を出したうえでKAINA付近でハンドオフします。
STARの承認は関西アプローチで行います。
進入
交信例(RWY32)
ANA1666, 5 miles from IKOMA. Descend and maintain 3500. Cleared for ILS RWY32L approach.
Descend 3500, cleared for ILS RWY32L approach. ANA1666.
ANA1666, contact Osaka Tower 118.1.
Contact Osaka Tower 118.1. ANA1666.
ILS RWY32L APCH
最も使われる進入方式でリクエストがない場合は基本これになります。
また、RWY32R及びRWY14L/Rへの周回進入もこの進入方式を使います。
間隔設定のためにレーダーベクターをする際はIKOMAもしくはファイナルへの誘導になります。
JAL2204, fly heading 270, vector to IKOMA.
JAL2414, Kansai Approach. Leave IZUMI heading 140, vector to final approach course. Descend to reach 11000 by KAINA.
ファイナルベクターをする際はIKOMA手前の4000のMVAを避ける為に、アプローチゲートのギリギリ手前でLOCに乗せるようです。
JAL3005, 4 miles from MIDOH. Turn right heading 290. Cleared for ILS RWY32L approach.
またIKOMA手前でLOCに乗せる場合は一度「Intercept localizer」を指示して3500のMVAの部分に入ってから降下指示と進入許可を発出するようです。
IBX78, turn left heading 350. Intercept localizer.
Left heading 350, intercept localizer. IBX78.
MVAクリア後
IBX78, descend and maintain 3500.
Descend 3500. IBX78.
IBX78, 8 miles from MIDOH. Cleared for ILS RWY32L approach.
Cleared for ILS RWY32L approach. IBX78.
なお一度しか聞いたことありませんが次のような言い方もされていました。
ANA37, 7 miles from IKOMA. Turn right heading 290. Maintain 4000 or above until established localizer. Cleared for ILS RWY32L approach.
ILS RWY32L APCH Circle To RWY32R
RWY14へのサークリングに比べると影は薄いですが、RWY32Rに降りるサークリングも頻繁に行われています。
ILS RWY32L APCHに続く周回進入なのでベクターなどはまったく同じです。
もちろん進入許可もスタンダードな周回進入のものになります。
IBX82, 6 miles from MIDOH. Turn left heading 340, cleared for ILS RWY32L appraoch circle to RWY32R.
このアプローチはANAのQ400やIBX機がすることが多い印象です。
RNP RWY32R APCH
RWY32Rに直線進入できる唯一の進入方式です。
こちらは管制からアサインすることはほぼなく、原則パイロットからのリクエストがあった場合のみです。
間隔設定のためにレーダーベクターをする際は基本的にIKOMAまたはKIKYOへ誘導します。
JAC2324, Kansai Approach. This time you are No.2. Expect RNP RWY32R, and expect radar vector to KIKYO.
北(ROKKO)からの到着機はGAMBAから進入することもあります。
Kansai Approach, JAC2324. 9000, information Q. Request RNP RWY32R approach. Accept via GAMBA.
JAC2324, Kansai Approach, roger. Recleared direct GAMBA. Descend at pilot`s discretion maintain 8000.
IKOMA及びGAMBAは公示通り3500から進入させて大丈夫ですが、KIKYOへレーダーベクターを行うなど、KIKYOへ直行してから進入を開始する場合はMVAが3500なので進入許可発出時に制限を付ける必要があります。
JAL2164, resume own navigation direct KIKYO. 6 miles from KIKYO. Cleared for RNP RWY32R approach. Maintain 3500 or above until KIKYO.
こちらはジェイエアのエンブラエルやJACのATRが使うことが多いです。
Visual APCH RWY32R
前述の通り北(ROKKO)からの到着機が行います。
基本的にパイロットからのリクエストにより実施されますが、交通状況などにより管制から提案することもあります。
JAC2324, do you accept visual approach RWY32R?
誘導はRight traffic pattern(Right Downwind)に行います。
誘導開始の際の誘導目標は「Vector to (right) traffic pattern.」と言うことが多いです。
JAC2322, expect visual approach RWY32R. Fly heading 160 vector to right traffic pattern. Descend and maintain 8000.
降下はMVAに沿って指示を出していき、最終的には3500までの降下を指示することができます。
その後は空港見えた段階でパイロットが自主的に「Airport in sight.」を通報し、進入許可発出となることが多いです。
JAC2322, airport in sight.
JAC2322, cleared visual approach RWY32R. Proceed to right downwind.
Cleared visual approach RWY32R. Proceed to right downwind. JAC2322.
大阪国際空港はクローズドパラレルなので、RWY32Lに直線進入してくるトラフィックとの間隔に注意が必要です。
なお、早いタイミングで空港が見えた場合は進入許可を発出せず、レーダーベクターを継続することがあります。
JAC2322, descend and maintain 7000.
Descend 7000 and airport in sight. JAC2322.
JAC2322, roger. Continue present heading.
Roger, continue present heading. JAC2322.
一度しか聞いたことありませんが、レーダーベクターではなくITE(伊丹VOR)への直行指示も出されていました。
Kansai Approach, JAC2324. Maintain 11000. Request RNP RWY32R approach or RWY32R visual. Information L.
JAC2324, Kansai Approach. You are No.1. Expect visual approach RWY32R. Expect direct ITE.
Roger. JAC2324.
JAC2324, recleared direct ITE.
Recleared direct ITE. JAC2324.
RNP RWY32L APCH
ほとんど使われることのないレアなアプローチです。
RWY14運用時にこの方式からサークリングを行ったり、ILSがメンテナンスなどで使えない際にパイロットからのリクエストで使用されます。
RNP RWY32R APCHへのベクターする場合と同じですがKIKYOではなくKOSAKになります。
ANA766, Kansai Approach. Leave IZUMI heading 080 vector to KOSAK. Descend and maintain 6000.
RNP RWY32R APCHと同じように、KOSAKへ直行してから進入を開始する場合はMVAが3500なので進入許可発出時に制限を付ける必要があります。
ANA766, resume own navigation direct KOSAK. 8 miles from KOSAK. Cleared for RNP RWY32L approach. Cross KOSAK at or above 3500.
VOR A APCH
RNP RWY32L APCH以上に使われることの少ない激レアアプローチです。
この進入方式はILSが試験やメンテナンスで使用できず、ILSからRWY32Rへの周回進入ができなくなった際に使われています。
もちろんこのIAPもIKOMAから始まるのでベクターの際はIKOMAに誘導します。
JAL2244, fly heading 270, vector to IKOMA. Expect VOR A approach.
滑走路を指定していない進入方式なので、着陸滑走路を指定する必要があります。
ANA1660, descend and maintain 3500. Landing RWY32R, cleared for VOR A approach.
交信例(RWY14)
JAL119, 5 miles from IKOMA. Descnd and mainain 3500. Cleared for ILS RWY32L approach circle to RWY14R.
JAL119, cleared for ILS RWY32R approach circle to RWY14R. Descned 3500.
JAL119, contact Osaka Tower 118.1.
JAL119, 118.1.
Circling Approach
ご存じの方も多いかと思いますが、RWY14L/R側は山があり直線進入ができないので、RWY14運用時はRWY32側の計器進入に続く周回進入(サークリングアプローチ)を実施します。
主にILS RWY32L APCHが使用されますが、たまにRNP RWY32L APCHからのサークリングが行われることもあります。
JAL2050, 6 miles from KOSAK. Cleared for RNP RWY32L approach circle to RWY14L. Cross KOSAK at 3500.
進入許可発出後はIAPに従いアプローチし、ほとんどの場合で空港から5NM手前の淀川上空までにLeft Breakします。(もちろん空港が見えている前提です。)
その後は空港西側のRight Downwind、Right Baseを通って着陸します。
ファイナルを長く取り過ぎると山に近づき、GPWSが鳴る可能性があるので注意が必要です。
現実では進入の目安となるようDownwindからBaseまで7つのライトが設置されています。
ですが、テクノブレインのシーナリーには設置されていないようです。
ホールディング
交信例
Kansai Approach, JAL2250. Leaving FL204, for FL170. Information S. Request RNP RWY32R.
JAL2250, Kansai Approach, roger. Expect RNP RWY32R approach. Hold east of MIRAI. Expect further clearance at 48.
JAL2250, hold east of MIRAI. EFC at 48.
ホールディングポイント
夜の到着ラッシュなどでホールドは必要な際は東(KODAI)からの到着機はMIRAI、南(IZUMI)からの到着機はIZUMIのホールディングパターンを使用します。
ANA1650, Kansai Approach. Hold south west of IZUMI. Expect further clearance at 1115.
一応北からの到着機のためにKAMEOにもホールディングパターンは公示されていますが、ROKKOに来る便は新千歳、函館、但馬、出雲などと限られており、到着ラッシュの時間にほとんど便がないので、使うことはあまりありません。
この他にもKAINAやSANDA、MIKANにもホールディングパターンが公示されています。
どのIAPもミスドアプローチの場合はIZUMI・5000ftでホールドするように公示されています。
IZUMIでのホールドを指示する場合は高度に気を付ける必要があります。
着陸編はこちら。
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