関西の玄関口、伊丹空港こと大阪国際空港。
2本の滑走路はクローズドパラレルで、32Lに到着機、32Rに出発機というテンションが上がるシチュエーションを見られたり面白い空港です。(VATであるかはわかりませんが…)
もちろん大阪国際空港にも他の大きい空港と同じく様々なローカルルールがあります。
なお、あくまでも現実世界の話であり、VATSIM上でこのとおりに運用されるとは限りません。
このページでは出発の流れを解説します。
基本情報
滑走路
A滑走路(RWY14L/32R)
有効長:1828m
B滑走路(RWY14R/32L)
有効長:3000m
運用時間
7:00~21:00
ですが、VATSIM上では特殊なイベントが開催されていない限り、24時間離着陸することができます。
注意点
現在Prepar3D、FSX向けに販売されているシーナリーはテクノブレイン社の「FSアドオンコレクション 大阪国際空港」のみです。発売後大きな変更点はありませんが、SPOT46はR6沿いでSPOT45の隣にあり、SPOT47, 48についてはそもそもありませんのでご注意ください。
また、デフォルトシーナリーとは誘導路1本分ほどずれています。
標準交信例・解説
クリアランス
交信例
Osaka Delivery, ANA38.
ANA38, Osaka Delivery. Go ahead.
ANA38, destination Tokyo. FL290, SPOT 10.
ANA38, cleared to Tokyo Airport via ASUKA4 departure, SHTLE transition flight planned route. Maintain FL160, expect FL290. Squawk 2203.
ANA38, cleared to Tokyo Airport via ASUKA4 departure SHTLE transition flight planned route. Maintain FL160, expect 290. Squawk 2203.
ANA38, read back is correct. Contact Ground 121.7.
Ground 1217, ANA38
DELへのコンタクト
IFRで出発する場合、大阪DELにエンジンスタートの5分前にコンタクトします。
その際通報する項目が決められています。
- コールサイン
- 目的地
- 提案高度(提出した高度から変更する場合は新しい提案高度)
- SPOT番号
東京国際空港とは違い、イニシャルコンタクトで管制官に「Go ahead」をもらってからで構いません。
Osaka Delivery, ANA777.
ANA777, Osaka Delivery. Go ahead.
ANA777, to New Chitose. Proposing FL410. SPOT 11.
これらに加え、離陸滑走路のリクエストがあれば同時に通報します。
JAL2209, SPOT 22. To Sendai, FL330. Departure RWY32L.
JAL2209, 32L copied. Cleared to Sendai Airport via…
もし、クリアランス受領後5分以内にエンジンスタートできない場合は大阪DELに通報する必要があります。
APUの使用制限
SPOT4番、5番~27番を使用する場合は、原則以下の時間を超えてAPUを使用することはできません。
- 出発予定時刻の30分前
- 到着後、地上からの動力設備が使用可能となるまでに必要とする最小限度の時間
- 航空機が点検整備のためAPUを必要とする場合は最小限度の時間
プッシュバック
DELで「Contact Ground 121.7.」と言われますが、実際にコンタクトするのはリクエストプッシュバックのタイミングです。
交信例
Osaka Ground, ANA38. SPOT 10, request pushback. Information S.
ANA38, Osaka Ground. Pushback approved RWY32.
Pushback RWY32. ANA38.
プッシュバック許可
伊丹のプッシュバック許可では滑走路のL/Rを指定しません。
ANA986, Osaka Ground. Pushback approved RWY14.
なお、必要な場合には出発滑走路と逆の方向にプッシュバックさせ、A誘導路へ入れることもできます。
ANA32, Osaka Ground. Pushback approved RWY32. Heading North.
Long Pushback
プッシュバック後すぐ同じSPOTに航空機が入る場合、もしくは付近の誘導路を使用する場合に指示されます。
ANA523, Osaka Ground. Roger. Pushback approved RWY32. This time make long pushback.
地上走行
交信例(GND)
Osaka Ground, ANA38, request taxi.
ANA38, RWY32L. Taxi via Ramp, E1 to holding point C1.
RWY32L. Ramp, E1 to C1, ANA38.
ANA38, contact Osaka Tower 118.1.
1181, ANA38.
滑走路の指定
ここで初めて離陸滑走路を指定します。
航空機ごとの使用滑走路についてはeAIP RJOO AD 2.20 LOCAL TRAFFIC REGULATIONS 1-2に記載があります。(下表は2020年8月現在)
滑走路 | 着陸 | 離陸 |
---|---|---|
RWY14L/32R | ・最大離陸重量が79,243kg以下の航空機 A320、DH8D、E170、E190、CRJ700等 | ・B735 ・最大離陸重量が34,500kg以下の航空機 DH8D、E170、ATR42、ATR72、CRJ700等 |
RWY14R/32L | ・B738、B737、B735 ・最大離陸重量が79,243kgを超える航空機 B763、B772、B773、B77W、B788、B789、A321等 | ・最大離陸重量が34,500kgを超える航空機 B738、B737、B763、B772、B773、B77W、B788、B789、A320、A321、E190等 |
必ずこの通りに滑走路を指定する必要はなく、パイロットからのリクエストや、交通状況によりA滑走路対応機でもB滑走路を使うことがあります。
各滑走路に向けた指示例
A滑走路からはタワーの管轄ですので、グランドはA滑走路手前までの走行指示をだします。
JAL3921, Osaka Ground. RWY32L, taxi via R-INT, A to holding point C1.
ANA1855, Osaka Ground. RWY32R, taxi via E1 to holding point C1.
JAL102, RWY14R, taxi via E-INT, A to holding point C6.
ANA501, Osaka Ground. RWY14L, Taxi via Ramp, E3, A to holding point C7.
32運用時はL/RともにC1まで、14運用時は14Rの場合はC6、14Lの場合はC7まで走行指示を出します。
E-INT?R-INT?
チャートに記載されているE/R-INTはそれぞれ「Romeo Intersection」「Echo Intersection」と読みます。
R-INTはランプとA誘導路を、E-INTはA誘導路又はC5からランプを繋いでいます。
Taxi via Ramp
伊丹特有の言い回しとして「Taxi via Ramp」というのがあります。RampとはA-TWYより内側の下図に示した部分です。
例えば、
ANA36. RWY32L, taxi via Ramp, E1 to holding point C1.
と指示された場合は、図のようにRampのエリアを通ってE1経由でC1まで向かいます。
交信例(TWR)
Osaka Tower, ANA38 with you.
ANA38, Osaka Tower. At C1, cross RWY32R, taxi to holding point W2.
Cross 32R, taxi W2, ANA38.
滑走路横断
B滑走路使用機は必ずA滑走路を横断するため、32運用時はC1手前、14運用時はC6手前でGNDからハンドオフされます。
32L出発機は基本的にW2からの離陸となるので、そこまでの走行指示を出します。
極稀にW1から離陸することもあり、その場合はNO.1 STOP LINEまでの指示をだします。
IBX55, Osaka Tower. At C1 cross RWY32R, taxi via B, hold short of NO.1 STOP LINE.
パイロットからのリクエストでW3からのインターセクションディパーチャーも稀にあります。
ANA1167, Osaka Tower. At C1 cross RWY32R, taxi to holding point W3.
14R出発機はW10までの走行指示が滑走路横断許可と共に発出されます。
JAL2375, Osaka Tower. At C6 cross RWY14L, taxi to holding point W10.
到着機などで滑走路横断を許可できず、待機させる場合は「Hold short of STOP LINE.」の用語を使用します。(後述)
ANA785, Osaka Tower. Hold short of STOP LINE, due to arrival.
Ready通報
Not readyの場合は出発滑走路に関わらず、TWRへのイニシャルコンタクトの際に通報することがほとんどです。
また、A滑走路出発機はReady、Not Readyのいずれかを通報します。
Osaka Tower, ANA1855. Not ready.
ANA1855, Osaka Tower. Hold short of STOP LINE. Report when ready.
Hold short of STOP LINE. Report when ready. ANA1855.
待機位置
C1、W10、及びW2についてはAIPに停止位置に関する記載があります。
C1…RWY32Rから離陸するウイングスパンが35.79m以下の航空機は下図のように外側で待機します。
ウイングスパンが35.79m以下の航空機とはB735、DH8D、E170、ATR42、ATR72、CRJ700等です。
W10…RWY14Rから離陸する航空機であり、なおかつジェット機である場合、RWY14Lへのジェット機の排気の影響を少なくするため、下図のように外側の誘導線を通ります。
W2…W2で滑走路手前待機を指示された場合は、W1へ向かう航空機とウイングスパンを確保するために、航空機は滑走路停止線と、左側にある3つの並列した赤色灯(Stop Aiming Lights)の延長線上の間で止まる必要があります。
離陸
交信例
ANA38, wind 050 at 3. RWY32L at W2, cleared for takeoff.
Cleared for takeoff RWY32L, ANA38.
Hold Short of STOP LINE
大阪国際空港では2009年から滑走路誤進入防止のために、滑走路手前待機指示はすべて次の用語を使用します。
ANA785, hold short of STOP LINE. We have arrival.
インターセクション名
大阪国際空港では離陸許可を発出する際に、滑走路端であってもインターセクション名を付与します。(極稀に付けない人もいます。)
ANA1666, wind 300 at 8. RWY32R at C1, cleared for takeoff.
JAL2375, wind 140 at 11. RWY14R at W10, cleared for takeoff.
14運用時
14運用の際は到着機はサークリングアプローチしか行うことができないため、出発機と到着機両方の間隔に注意を払う必要があります。
間隔設定のため、離陸許可やLine upの指示と共にHDG100を指示する場合が多いようです。
JAL2375, after airborne fly heading 100. Wind 140 at 11, RWY14R at W10, cleared for takeoff.
また滑走路横断許可と離陸許可が同時に出される場合もあります。
JAL2375, at C6, cross RWY14L. Wind 140 at 11, RWY14R at W10, cleared for takeoff.
初期上昇
RJBB_DEPについては、空域分担はどのようになっているのかいまいち掴めていないので、ある程度つかめている伊丹発メインの関西ディパーチャー(FREQ:119.5)について書きます。
交信例
ANA38, contact Kansai Departure.
Contact Kansai Departure, ANA38
Kansai Departure, ANA38. Leaving 2000 climb FL160.
ANA38, Kansai Departure, radar contact.
ANA38.
ANA38, contact Tokyo Control 123.9.
123.9, ANA38.
周波数の省略
大阪国際空港では、DEP周波数はATISに書いてあるので「Contact Kansai Departure.」のみです。
たまに周波数を言う人もいます。
イニシャルコンタクト
イニシャルコンタクトは「Radar contact」だけのことがほとんどです。たまにMaintain [暫定高度]と付けたり、HDG180でレーダーベクターをするときもあるようです。
東行き(ASUKA、MINAC等)
暫定高度はFL160です。
ASUKA及びMINACへの直行はよく出されています。これらに関してはDEP権限で指示を出せるようです。
ただKCCへの直行をリクエストしてきた航空機に対しては調整が掛かってました。
西行き(TIGER等)
暫定高度はFL200です。
TIGERやAWAJIへの直行はDEP権限で出せるようです。
このあとは関空出発便を管轄する関西ディパーチャー(FREQ:119.2)へハンドオフされます。
出雲・但馬行き
TIGER DepartureのASAGI TransitionまたはTOZAN Transitionを経由する便は、識別をとってしばらくしてからレーダーベクターをする場合が多いようです。
この場合は、神戸VOR 324 radialもしくはASAGIへベクターします。
JAC2323, fly heading 270 vector to ASAGI.
JAL2357, turn right heading 270 vector to intercept KCE 324 radial.
レーダー誘導を終了した後、主に神戸離発着便を管轄する関西レーダ(FREQ:120.85)にハンドオフします。
RWY32L/Rから離陸する際はどのSIDでも一度左旋回を行います。アドオンによっては右旋回をしたり、変なところで変な方向に旋回したりするので注意が必要です。
騒音軽減運航方式
大阪国際空港では、空港周辺における航空機騒音軽減のため騒音軽減運航方式が設定されており、eAIP RJOO AD 2.21 NOISE ABATEMENT PROCEDURESに記載されています。
離陸
すべてのジェット機に対して、空港周辺における航空機騒音軽減のため、運航の安全に支障のない範囲で急上昇方式が適用されます。ただし、急上昇方式によることができない航空機は実効的にこれと同等と認められる代替方式を実施するものとされます。
優先飛行経路
すべての離陸機を対象に、空港周辺地域における航空機騒音の影響を受ける区域の拡大を防止するため、次のような優先飛行経路が運航の安全に支障がない範囲で適用されます。
32運用時
離陸後ITE VOR/DME附近上空を通過し、その後北端を中国縦貫道路、南端を瑞ヶ池及び昆陽池(ISK 2.8DME)、並びに西端を武庫川(ISK 3.6DME)で囲まれる範囲を飛行するよう左上昇旋回を継続し、ITE VOR/DME 2.2DMEを通過したのちSIDに従います。
それぞれ
- 中国縦貫道路は伊丹VORの少し北を東西に走っている高速道路
- 瑞ヶ池は四角の池
- 昆陽池は真ん中に日本列島の形をした島がある池
- 武庫川はその西にある大きめの川
です。
14運用時
離陸後、阪神高速道路まで直線飛行し、その後旋回上昇に移し、SIDに従います。
阪神高速道路は滑走路の延長線上を南北に走っている高速道路です。
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