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VATSIMでも他機と接近する場合は、管制官から速度の指示を受けることがあります。
たかが速度指示と侮るなかれ、「なんだか知識があやふやそうだな」と感じる受け答えをされる方が多いですので、しっかり確認しておきましょう。
速度の報告
基本的に速度の指示を受ける前に、自機の速度について報告するよう求められます。
指示対気速度(Indicated Air Speed)を聞かれる場合

ANA34, report speed.
指示対気速度(Indicated Air Speed)を報告してください。

270kt, ANA34.
現在270ktで飛行しています。
Report Speed.と聞かれた場合は必ずIASで返答します。マック数(マッハ)や真対気速度(True Air Speed)、対地速度(Ground Speed)で答えてはいけません。
また、高高度ではマック数を使用するもの、と考えている方もいらっしゃるようですが、管制基準の文言を素直に解釈するならばそれは間違いです。
速度調整は、指示対気速度(以下「IAS」という。)により行うものとする。ただしFL250以上の高度においては、マック数を指示して行うことができる。 この場合、IASについては10ノットの整数倍の数値で行うものとし、マック数については0.01の整数倍の数値で行うものとする。
管制方式基準 (Ⅳ)-9-(1)-c.
マック数を指示して行うことができるですから、必ずしもマッハを使う必要は無いわけですね。 したがって、どんな高度を飛行していようとも、「Report speed.」と言われた場合は、指示対気速度(IAS)で答えなければなりません。
マック数を聞かれる場合
では管制官がマック数で答えて欲しいと思っている場合はどうなるのでしょうか?

ANA34, report mach number.
マック数を報告してください。

Mach .82, ANA34.
マッハ0.82で飛行しています。
「Report Mach Number.」と聞かれた場合のみ、マック数で返答します。
答え方はMach Point 82.(マックポイント エイトトゥー)です。小数点の.はpointと読みます。一の位の0は読みませんので、Mach Zero point Eight Two.とはなりません。
Mach 82とか言わないようにしましょう。たぶんこれだとマッハ82になってしまいます。ブラックバードもびっくりです。
通常コックピットの計器には小数点第3位までマッハ数が表示されていることと思いますが、第3位を四捨五入して第2位まで答えます。
速度指示
速度を指示される場合は、IAS(ノット)、またはマック数で指示されます。
また、IASの場合もマック数の場合も、[reduce/increase] speed to [速度].の用語が用いられます。
航空機は指示された速度の±10ノット又はマック数の±0.02の範囲内で飛行する。
管制方式基準 (Ⅳ)-9-(1)-c注.
乱気流等で上記を維持できないような場合は、管制官にその旨を伝えなければいけません。
もし気象状況等安全上の理由によって指定された速度で飛行するすることが不適当な場合は、その旨速やかに通報しなければならない。
AIM-j 2017年前期版 516.a.・623.

Tokyo control, ANA34, unable maintain 320kt due to turbulence, request 280 knots.
乱気流の為、320ktを維持することができません。280ktを要求します。
また、拡大解釈して指示された速度より速い速度、または遅い速度を意図的に飛ぶことのないようにしてください。
指示の仕方にはいくつか種類があります。
(速度は上記の例をそのまま流用しているだけです。270kt=マッハ0.82等という意味ではありませんのでご注意ください。)

ANA34, reduce speed to [250kt/mach .80].
[250kt/マッハ0.80]まで減速してください。

ANA34, increase speed to [290kt/mach .84].
[290kt/マッハ0.84]まで加速してください。

ANA34, maintain [270kt/mach .82].
[270kt/マッハ0.82]を維持してください。

ANA34, maintain present [speed/mach number].
現在の[IAS/マック数]を維持してください。

ANA34, maintain [270kt/mach .82] or [less/greater].
[270kt/マッハ0.82][以下/以上]を維持してください。
上の場合は、例えば270kt以下を指示されたときはパイロットの判断で減速することが出来ますし、270kt以上を指示されたときはパイロットの判断で加速することが出来ます。
(ただし分かる範囲で良いので、交通の流れをある程度考慮して速度を決定しましょう。)
なお降下中に減速を指示されたときは、まず速度調整に従うようにしましょう。
降下中に減速を指示された場合は、降下率をへらしてまず速度調整に従い、その後再び降下を行うべきである。
AIM-j 2017年前期版 516.a.ⅱ)注2

ANA34, reduce speed to 250kt, then descend and maintain FL150.
250ktに減速してからFL150まで降下してください。
上の場合、降下を開始する前に減速しなければなりません。逆に言うと概ね250ktに到達する前に降下を開始してはいけません。

ANA34, descend and maintain FL150, then reduce speed to 250kt.
FL150まで降下してから250ktに減速してください。
今度は逆に、先に降下します。速度を落とすのはFL150まで降下が完了してからです。
また、アプローチ中に着陸速度まで減速する必要がある場合は、次のように指示されます。

ANA34, reduce to minimum approach speed.
最低進入速度に減速してください。
速度調整の終了
速度調整の必要がなくなった場合、管制官から次のように指示されます。

ANA34, resume normal speed.
通常の速度に戻してください。
ただし、下記の交信例のように進入許可等が指示された場合は、「Resume normal speed.」と言われなくても速度調整は自動的に終了となります。

ANA34, climb via SID to FL210.
SIDに公示された制限を守って、FL210まで上昇してください。

ANA34, descend via STAR to 3500.
STARに公示された制限を守って、3500ftまで降下してください。

ANA34, cleared for ILS runway 32L approach.
ILSを使用しての滑走路32Lへの進入を許可します。
なお、上記の指示に加え速度調整が引き続き必要な場合は、その旨が別途指示されます。

ANA34, cleared for ILS runway 32L approach. Maintain 170kt or less.
ILSを使用しての滑走路32Lへの進入を許可します。170kt以下を維持してください。
また、STARなどに公示された速度制限に従って飛行させる必要がある場合は、次のように指示されます。(この部分については複雑なので、別途記事を作成中です。)

ANA34, resume publised speed.
公示された速度に従ってください。
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