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フィックスへの直行とMVA

この記事には一部筆者の独自研究及び推測が含まれます。

レーダーベクターを行っている時の高度指示はMVAに従うというのはS3の皆さんはもちろんご存知だと思います。また、STARに従っているときは高度制限を基準に降下させるということも。しかし、進入FIXに直行させた場合のように、レーダーベクターでもなければSTARに従っている場合でもないときは何を基準に高度指示を行っていますか?

おそらく現実の航空無線を聞いている限り、このような場合MVAに従って高度指示を行っているものだと思いますが、根拠なく断定することはできません。
この根拠について筆者なりに考察してみました。

まずMVAの定義とは?

とりあえず現行の基準に答えはないのか?MVAそのものの定義と関連する基準から確認してみることにします。

最低誘導高度(Minimum vectoring altitude-MVA)
レーダー誘導を行う際、航空機に指定することができる最低高度をいう。

VATJPN管制方式基準(Ⅰ)2a定義(1)

【最低誘導高度】
(2)
 a. 誘導は、レーダー進入における最終進入中の航空機の誘導、7(1)及び(4)に規定する誘導 並びに同時平行ILS進入にかかる航空機の回避指示に続く誘導を行う場合を除き、bの基準により定められた最低誘導高度以上の高度で行うものとする。
 b. (a) 最低誘導高度は、地形、レーダー性能、飛行経路、航空交通の特性及び管制業務の分担を勘案して、誘導を行う管制機関の管轄区域のうちレーダー管制業務を行うものを分割した区画((b)において「セグメント」という。)ごとに(b)に掲げる基準により定めるものとする。

  (b) 最低誘導高度は、セグメントの外縁線からアに掲げる距離にある当該セグメントの外側の線により囲まれた範囲内の区域にある最も高い障害物の高度に、イに掲げる基準値以上の数値を加えた高度とする。

以下省略

VATJPN管制方式基準(Ⅳ)4(2)

レーダーベクター時のことしか書かれていませんね。これでは根拠になりません…
筆者が探した限りでは、管制方式基準、AIM-j及びAIPには少なくとも明文化されたものを見つけることができませんでした。
なのでここからは数少ない情報をもとに、論理的に考察していきたいと思います。

FIXへの直行はどのような経路と解釈できるのか

そもそもFIXへの直行はどのような経路と解釈できるのか。
逆にFIXへの直行ではなく、STARなど公示されている経路の解釈から考えてみたいと思います。

ATS 経路(ATS route)
公示された飛行経路であって、航空路、RNAV5 経路、直行経路、洋上転移経路、標準計器出発方式、トランジション及び標準計器到着方式をいう。

VATJPN管制方式基準(Ⅰ)2b定義(1)

これは特に考察する必要もありませんね。STARはこの公示された飛行経路、つまりATS経路です。逆に考えると、FIXへの直行は管制官が指示したものであって、公示されたものではありませんからATS経路ではないと解釈できます。

ATS経路ではない経路の高度指示は何を基準にするのか

ではいよいよ本題です。
先ほども述べた通り、少なくとも筆者が手に入る限りの日本国内の文書では、明文化された答えを見つけることはできませんでした。
そこで少し視野を広げてICAOの文書を調べてみることにします。

When vectoring an IFR flight and when giving an IFR flight a direct routing which takes the aircraft off an ATS route, the controller shall issue clearances such that the prescribed obstacle clearance will exist at all times until the aircraft reaches the point where the pilot will resume own navigation.
IFR機をレーダー誘導もしくはATS経路から逸脱させる直行経路を飛行させる時、管制官は当該航空機がATS経路に復帰するまでの間常に、当該航空機と障害物との間に定められた間隔が満たされるような管制許可を発出しなければならない。

ICAO Doc.4444 Air traffic Management(PANS-ATM)8,8.6.5.2 抜粋

日本語訳は筆者のガバガバ英語で翻訳したものですが、「obstacle clearance」の定義が見つからずどう訳すかで無茶苦茶悩みました。
しかし、下に示す「Minimum Obstacle Clearance Altitude(MOCA)」や「Required Obstacle Clearance(ROC)」の定義を見る限り、少なくとも航空機と障害物との衝突を防ぐために定める安全間隔であることは確かなようなのです。(詳しい人いたら教えてください)

Minimum Obstacle Clearance Altitude(MOCA)
The MOCA is the minimum altitude for a defined segment that provides the required obstacle clearance. A MOCA is determined and published for each segment of the route.

ICAO Doc 8168 PANS-OPS

ここでも「obstacle clearance」が出てきてるので日本語訳はしていません。
ちなみにGoogle翻訳を使ってみたら、障害物クリアランスとかいう意味の分からない訳が出てきました。なので完全にこの部分は筆者の意訳です。

細かい訳はどうであれ、要は航空機が地表の障害物と衝突せず安全に飛行できる高度であればいいわけです。
この高度はエンルートであればMEA、STARでは高度制限を守ることによって担保されます。

しかし、定められた高度が存在しないFIXへの直行の場合でもどうにかして安全に飛行させなければいけません。
でも一つだけ場所ごとで決まっていて、どんなルートでもその高度を守れば障害物との衝突を回避できるものがありますよね?
そう、MVAです。
これを守れば、少なくとも上記のICAOの基準を満たすことができます。

ここで再び管制方式基準に戻ります。

進入許可は、到着機が当該フィックスに到達するまでに発出するものとする。なお、当該許可を発出する際には併せて当該機に対し直行を指示した進入フィックスまで最低誘導高度以上の高度を維持するよう指示しなければならない。

VATJPN管制方式基準( Ⅳ )8-(7)-d.

これは進入許可を発出するときの規定ですが、直行を指示した進入フィックスまではATS経路から逸脱している経路です。この経路を飛行する航空機に対して、MVA以上の高度を当該フィックスまで維持させなければならないと書いてありますから、FIXへの直行を指示した場合はMVAを適用するという解釈が誤りではないということはわかると思います。

これを利用すると・・・

富山空港ではNANAO-Arrivalの開始点であるY885の「URUSI」まではFL200のMEAが存在します。
つまり、「URUSI」に着くまではFL200以下には降下することができないのです。

ここで、NANAO-Arrivalのチャートを見てみると

「URUSI」から進入フィックスである「MEDIC」までは44NMしかありません。
単純計算でFL200から3000ftまで降下するには、減速距離を考慮しなくても51NM必要です。実際には減速が必要ですから、「MEDIC」を3000ft以上で通過することを考慮しても降下が厳しいのは分かるかと思います。

ここで、富山のMVAチャートを見てみます。

チャートには「URUSI」の場所が載っていませんが、「URUSI」周辺のMVAは6000ftです。
その手前、エンルートの途中のMVAは13000ftですから、「URUSI」に直行指示を出してMVAを適用すれば、余裕を見ても13000ft(MOCAは12000ftですから、ここまでは下げれるかも)までは降ろすことができます。

こうすれば降下はだいぶ楽になりますね。
実際、富山空港ではこのようにしてMEA以下に降下させていることもあるようです。

このようにして、MEAよりも更に低い高度まで降下させることもできるわけです。(勿論障害物とぶつからないようにしなければいけません。)

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