内容の正確性について

S2OJTでよくありそうな質問

Student1/Student2

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内容が古くなっている可能性があります。

この記事は「Reverse Green」で公開されていた記事を元に、筆者の偏見と筆者独自の考えを加えて作成しています。

OJT全般

ソロトレーニング指定空港はどこを選択するべき?

現在ソロトレーニングが認められているのは宮崎、鹿児島、広島の3空港です。
もちろんどの空港でトレーニングした場合もS2レーティングを取ることは出来ますが、総合的に見て一番シンプルで取っつきやすいのは宮崎ではないかと思います。
とはいえはっきりどうと言えるほど難易度に差があるわけでもないので、好きな空港や、他の人と被っていない空港を選べば良いでしょう。
ただし標高が高い広島空港や鹿児島空港については天候が悪くなりやすいので、季節や天気予報に多少気を配った方が良いかも知れません。

OJT実施時の管制予約について詳細を知りたい

OJTを実施する場合、教官がログインするかどうかにかかわらず管制予約が必要になります。
管制予約には「OJTである旨」及び「トレーニングの重点課題」を明記することが義務づけられています。”明記”ですので、はっきり誰にでも分かるよう記載しましょう。以下に記載例を示します。

初OJTです。よろしくお願いします。
重点課題: IFR機の取り扱い

1人だと不安、という場合は「どなたか教官としてログインして頂けると有り難いです。」と書き添えておくといいでしょう。

なお、当初予定していた時間に終了しない(出来ない)場合は、タイミングを見てなるべく早く予約を延長、または予約をし直しましょう。

口が回らない/用語が出てこない

いろいろなシチュエーションを想像しながら、実際に声に出して練習するのが意外と効果が高いです。
声に出して練習することで、「管制用語を話す」という動作を身体が覚えてくれます。そうするとぎこちなさも消えていきますし、身体が覚えてくれているぶん「話す」ことに脳のリソースを割かずに済み、「どのような指示を出すか」を考えることにリソースを割けるようになります。
実際の航空管制を傍受出来る方は、それを聞いて管制官の真似をしてみるのもとても効果があります。

IFRとVFRどちらの練習が重要?

まずはIFRの練習をするのが良いでしょう。
と言ってもIFR機に対してのみ行われるタワー管制官の仕事はとても少ないです。プッシュバックも地上走行も滑走路内進入も離陸も進入継続も着陸も、基本的にVFRと共通で、特に必要な仕事はクリアランスと計器進入方式をATISで設定することくらいなのです。
クリアランスをスムーズに発出出来るようになったら、IFRに特化した練習はもう必要ありません。

というわけで、S2レーティングを取得するにあたっては圧倒的にVFRの方が重要です。
基本的な管制業務の流れが掴めてきたら、あとはVFR機同士の間隔調整、IFR機とVFR機の間隔調整をひたすら練習しましょう。その際、30秒先、1分先を常に予想し、先手を打っていくことが重要です。
ちなみにS3では5分、10分先を、C1では30分、1時間先を読んで準備していくことが重要になります。タワー管制でVFRを捌く技能はその先でも必要なのです

VRCについて

「Could not read INI file」というエラーが出る

VATJPNのフォーラムをご覧ください。基本的にはVRC関連ファイルのパスに全角文字が使われているとこのようなエラーが出るようです。
FS関連は英語環境が前提になっている場合も多いです。Windowsのユーザー名等は半角アルファベットを使用するようにした方が良いでしょう。

エアクラフトセレクトキーってなんですか?

asel等とも表記されますが、これは対象の航空機に対してなんらかの動作を実行するときに使用する汎用キーです。
例えば、コールサインの一部又は全部をコマンドライン(1番下のテキスト入力スペース)に入力し、aselを押すと、該当する航空機が選択状態になります。
また、航空機が選択された状態でコマンドラインにコマンドを入力し、aselを押すと、当該機に対してそのコマンドが実行されます。1番多く使うのは.QBコマンド(F9でも可)+aselでしょうか。当該機に対してスコークコードを割り振ることが出来ます。

レーダーモードはどれを使ったら良い?

基本的にタワーモードを使用します。タワーモードより下のモードはレーダー管制用のもので、タワー管制には向いていません。
グランド用の別ウィンドウを用意している場合は、グランドモードやシンプルモードを使っても良いでしょう。レーダーモードはウィンドウごとに個別に設定出来ます。

ハンドオフ?トラッキング?

VRCでは自分が担当するトラフィックを明確にするため、各管制官がそれぞれのトラフィックをトラックします。が、これは基本的にはレーダー管制において使用する機能で、タワー管制官はトラックする必要はありません。
例外的に、アプローチを担当する管制官からハンドオフされた場合にはトラックします。クリックするなどして当該航空機を選択、F3キー+asel、でハンドオフを受取り、トラッキングを開始出来ます。

タワー管制官はトラッキング機能を使用しませんが、レーダー管制にはトラッキング機能が必須です。到着機がゴーアラウンドした場合等、自分がトラッキングしている航空機をアプローチやコントロール管制官にハンドオフする場合は、トラッキングを外す(F4キー)又はレーダー管制官にレーダーハンドオフしましょう。

レーダーハンドオフの仕方:右クリックメニューからハンドオフする、または
F4キー⇒相手の管制官のコード(Controller Listの、管制官のコールサインの左側にある英数字)を入力⇒asel

コールサインの横にある/tとか/rってなに?

これは、航空機が利用できる通信方法を表しています。

  • 何もなし→Voiceによる通信が可能
  • /t→テキストのみ利用可能
  • /r→Receive only。Voiceによる通信を受信できるが、航空機側の応答はテキスト。
  • /?→通信方法が設定されていない。

これらは基本的に航空機が提出したフライトプランに基づき表示されますが、/?となっている場合や、何もないのにテキストしか使えないという場合があります。
そういう場合は、自分で設定しましょう。

設定の仕方:F9キー⇒v(音声が使える場合)or r(receive onlyの場合) or t(テキストの場合)を入力⇒asel

航空機が設定しているスコークが指定されているものと違う?

VRCでは、F9キーで割り当てたスコークコードと航空機側が設定しているスコークコードが違う場合、航空機側が現在設定しているスコークコードが表示されます。

このような表示を見たら、正しいスコークコードを設定するように指示してください。

航空機のシンボルが丸い航空機はなに?

これはスコークモードがCになっている、かつスコークコードがVFR(1200 or 1400)の航空機であることを表します。
管制圏内を飛ぶVFR機は原則として(TCAを要求してきた機などを除く)このシンボルになっていなければいけません。
このシンボルになっていないVFR機は、モードCもしくはスコークコードがVFRになっていないので、設定するように指示しましょう。

気象

VMCの条件が判然としない

タワー管制を行う際にVMCとなるのは地上視程5km以上、雲高300m以上です。PRCの当該ページにある一番下のイラストがそうです。
これをMETARから読み取ります。
視程は簡単ですね。日本のMETARにおける視程の単位はメートルですので、視程が5000以上であればOKです。

問題は雲高でしょうか。METARで雲の高さを示す情報としてはFEW、SCT、BKN、OVCの4つが提供されていますが、このうちBKN以上(BKN又はOVC)を雲高の情報として使用します。
ついで高度ですが、上記の4つはフィートで提供されているため、メートルに直す必要があります。1ftはほぼ0.3mですので、300mはおよそ1000ftです。計算して貰えれば分かりますが1000ftであれば300mを超えているのでVMCと判断出来ます。逆にBKN009以下やOVC009以下がある場合はIMCです。
ここでもうひとつ気になるのが空港の高度です。METARで提供されている雲高情報が海面からの高度で示されている場合、当該高度から空港の標高を差し引かなければならなくなります。
なんて言うと計算しなきゃいけないのか・・・と思われたかもしれませんが心配要りません。METARで提供される雲高は空港からの高度です。従ってどの空港であっても、BKN009/OVC009が基準となります。

ATIS

使用滑走路はどうやって決めるの?

基本的には風向に最も近い滑走路を選択します。

しかし、VATSIMではすべてのパイロットがビジュアルアプローチやサークリングアプローチをすることができるとは限りません。したがって、目安として追い風成分が10kt未満の時は、ILSアプローチを選択できる滑走路を優先的に使用するほうが無難です。
例えば、宮崎ではILS Z RWY27 APCHが設定されているため、RWY27を優先的に使用します。

追い風成分は三角関数を使ったり、インターネットに計算サイトがあったりするのでそちらを使って計算してください。

また、一部の空港では、無風滑走路(風速が5kt未満の時に使用する滑走路)が設定されていたり、滑走路の使用基準が公示されています。このような場合は、これに従います。

RWY16 will be preferentially used when tail wind component is 10kt or less.

eAIP JAPAN RJFF AD 2.20  LOCAL TRAFFIC REGULATIONS 1  AIRPORT REGULATIONS 1.2 RWY relations

進入方式はどうやって決めるの?

アプローチの管制官と調整してください。

規定上、滑走路の選定はタワーの管制官が行うことになっていますが、進入方式については明記されていません。
ビジュアルアプローチを行うことができる条件等はS3の範囲ですので、進入方式については必ず上位管制官に確認を取りましょう。(UNICOMの時はよしなに)

IFR機

クリアランスのフライトプランのチェックはSIDだけでいい?

可能ならば、国内を飛ぶ航空機は、提出されたフライトプランが正しくSTAR又はIAPの開始点まで適切に繋がっているか確認してあげてください。(上位管制官も喜びます)
プランの修正が必要な場合には、フライトストリップからフライトプランを書き直し、クリアランスを発出しましょう。

RJFM_T_TWR
RJFM_T_TWR

JAL3626, cleared to Fukuoka airport via SASIK2 departure SASIK G339 OSTEP then direct. Maintain FL150. Squawk 1501.

この際、フライトプランを修正する旨と新しいフライトプランをパイロットにテキストで送ったほうがスムーズに進むかと思います。

また国際線の場合には、外国のチャートまで調べるのは無理があるので、福岡FIR内のルートのみをチェックするのが安牌です。

テキスト機に対してクリアランスを発出するのに時間がかかる

Aliasを使用すると楽になれます。
詳しくはこちらをご覧ください。

サークリングアプローチはどのように交信すればいい?

パイロット向けですが、こちらに解説記事があります。

サークリングアプローチのブレイクの方向はどう決めるの?

サークリングの最低気象条件が定められているIAPチャートには、サークリングを行っていい方向が公示されています。

eAIP JAPAN RJOO AD 2.24  CHARTS RELATED TO AN AERODROME-Instrument Approach Chart (ILS RWY32L)

ただし、公示されていない場合もあるので、その場合は上位管制官と調整しましょう。(出発機との都合もあるので)

サークリングアプローチ中の機にextend downwindを指示出来る?

出せません。
サークリングアプローチでは、管制圏の外から飛来したIFR機がダウンウィンドやベースレグを通って着陸するため、VFR機と交錯することも多く、ついextend downwindと言いたくなってしまうことでしょう。
しかし、IFR機が飛んでいるそれは、厳密にはトラフィックパターンではありません。
便宜上、管制でもreport base.とか使われるので紛らわしいのですが、管制基準上でも明確に否定されています。トラフィックパターンでは無い以上、延長も360°旋回も270°旋回もさせられません。
ではVFR機と交錯する場合どうしたら良いのかというと、First come, First served.に立ち返ります。VFR機は邪魔にならないところで待機です。

「Reduce to minimum approach speed.」の指示はTWRでも出せるの?

出すことはできます。
ただし、必ず上位管制官の許可を貰ってから出しましょう。(後続機がいる場合には、間隔が詰まってしまうこともあります)

Missed approachを指示する場合は、「Go around」の指示はいらない?

必要です。
どちらも「復行」という言葉を含むので同じと解釈しやすいですが、「Go around」は進入中の位置を問わず着陸を断念し、着陸しない体制に移ることを意味します。一方、「Missed approach」はその後の飛行方法を示します。

つまり、Missed approachを指示する場合でも、Go aroundの指示は必要なのです。

RJFM_T_TWR
RJFM_T_TWR

JAL689, go around. Excute missed approach.

第29回ATSシンポジウム研究発表「Go aroundとMissed approach」を参考に作成しています。

VFR機

パイロットが言ってくる地名はどこでわかるの?

これは目視位置通報点(Visual Reporting Point)というもので、各空港に専用のチャートが用意されています。

eAIP JAPAN RJFM AD 2.24  CHARTS RELATED TO AN AERODROME-Other Chart (Visual REP)

OJT空港の位置通報点の大体の位置を覚えておくと、その地点での待機も指示できるので便利かもしれません。

RJFM_T_TWR
RJFM_T_TWR

JA51NY, hold at SHIRAHAMA.

RJFM_T_TWR
RJFM_T_TWR

JA51NY, proceed to 3NM south of airport via SHIRAHAMA.

パイロットリクエストにはどう対応するべき?

基本的には応じます。特にVFR機の場合小型機であることも多く、さらに障害物や他の航空機を避ける義務がパイロットにあるため、IFR機よりも飛行経路設定の自由度が高いです。
管制官からは分かりづらい情報もパイロットは視覚情報として得ており、シチュエーションによってはパイロットの希望に合わせた方がスムーズに事が運ぶ場合もあります。
ただし、交通状況によってはパイロットリクエストなど殴り倒していかなければなりません。空港から半径5NM以内の空間は、管制官が支配するのです。空港が混んでいる場合はこちらから命令して、パイロットをそれに従わせていかなければ余計に混乱します。

Extend downwind等はどこまで延長して良いの?

初心者のうちはとにかく頼りがちなExtend downwindですが、トラフィックパターンを飛ぶ航空機は管制圏、つまり(原則として)半径5NMかつ3000ft以下の空間にとどめなければなりません。
つまりダウンウィンドを延長している場合であれば、ベースレグへの旋回も含めて5NM以内を飛行出来るタイミングでContinue approachを出す必要があります。
ダウンウィンドだけで収まりきらない可能性がある場合は360°旋回をさせる、ダウンウィンド延長とベース進入時の270°旋回を併用する等の対応が必要です。
さらにトラフィック量が多い場合等は、無理せずトラフィックパターンからの離脱や管制圏外でのホールドを指示しましょう。

あまり使用されていませんが、Extend upwindやExtend crosswindも使用出来ます。慣れてきたら活用してみると良いでしょう。
ただしExtend downwindと違い、あっという間に管制圏外に出てしまう点には注意してください。

インバウンドの間隔調整はどうすればいい?

VFR機はパイロットが多くの責任を負っているため、管制官からあまり細かい指示(例えばヘディングや高度、速度の指示)を出すことは出来ません。その為、間隔調整を行うに際して混乱してしまう人が多いように感じます。
でも実際はそんなに難しく考える必要はありません。誤解を恐れずに言えば、「良い感じに調整してね」とパイロットに間隔保持を委ねれば良いのです。
具体的には先行機を視認させ、”follow the traffic”を指示します。VATJPNのサイトにも交信例として載っていますが、これが意外と重要なセンテンスになりますので、適切に使えるよう練習しましょう。IFR機の後ろにVFR機を進入させる場合にも使えます。
なお、雲の状況などはパイロットごとに異なるため、天気が良さそうに見えても先行機を視認出来ない場合があります。その時は管制側から、適切に間隔を保持出来るようホールドやトラフィックパターンからの離脱、ダウンウィンドの延長等の指示を出さなければならないことも頭に入れておいてください。

「良い感じに調整」して貰うためには、パイロットがうまく間隔を取れるようお膳立てしておくこと交通情報の提供が重要です。ルールを守りつつ、適切な指示を出し、パイロットに分かりやすい情報提供が出来るよう練習しましょう。

IFR機が来ているが、VFR機の方が滑走路に近い。どうしたら?

ちょっと説明が足りないので補足すると、このままVFR機を着陸させた場合、IFR機がゴーアラウンドしてしまうようなシチュエーションを想像してください。
さて、航空管制の基本はFirst come, First served.(先に来た人から対応する)です。
これに(ある意味で)素直に従えば、VFR機を先に着陸させ、IFR機は仕方が無いからゴーアラウンドとなりそうな気もします。でもなんだか変じゃない?と感じる人が多いことでしょう。

結論から言うと、この場合VFR機をホールドさせるのが正解です。
S2では必要の無い知識ですが、IFR機をホールドさせるためには、原則としてホールド地点到達時刻の5分以上前にホールドの指示を出す必要があります。従ってタワー管制官に到着機がハンドオフされてから、当該機にホールドの指示を出すことは出来ません。
レーダー管制官にお願いしてホールドさせる・・・という手も考えられなくは無いですが、ホールド可能な地点から5分以上手前となると、着陸からは10分以上時間があります。10分先のVFR機の状況を予測するのは不可能です。

このように止まることが出来ないIFR機は、VFR機が滑走路に近づくよりも前から既にcomeしていると考えます。例えVFR機よりも滑走路から遠かろうと、既に来ている(First come)以上、先に着陸させる(First served)のが正解です。

SVFRの許可はTWRで勝手に出していいの?

出してはいけません。
SVFRの許可はIFR機に支障がある場合は出すことができないため、TWRの判断で勝手に出すことはできません。必ず上位管制官に許可を求めましょう。

模擬計器出発の許可はTWRで出していいの?

模擬計器出発とは、簡単に言うとVFR機がIFR機と同じようにSIDを飛行する方法のことです。許可の仕方は空港によって変わるので一概には言えませんが、TWR OJTの3空港のようにターミナルレーダーが設置されているTWR空港では、ターミナルレーダーの管制官が許可を出します。TWRの管制官はその許可を中継するだけなので、これも上位管制官に許可を求めましょう。

コメント

  1. eseh より:

    こんにちは。いつも参考にさせていただいております。良質の記事をたくさん書いて頂きありがとうございます。一点質問がありコメントいたしました。

    「サークリングアプローチ中の機にextend downwindを指示出来る?」の節について、できないというご結論だと思います。ところが、AIM-J(2021前期)の664項「サークリング中の飛行」の項を読むと、以下のように記載されております。
    (前略)…サークリングを行う航空機に対しては他のIFR機との間に管制間隔が設定されているが、飛行場がVMCであればVFR機が近辺を飛行している可能性がある。パイロットが周回進入区域から外れて大きいトラフィックパターンを飛行することを要求した場合、あるいは管制官がVFR機との関連で飛行方式を指示した場合は、周回進入の方式は終了し 以後管制官の指示に従った目視による進入となる。

    つまり、飛行場管制官が”extend downwind”とか言ってもよく、その場合サークリングアプローチは終了し、コンタクトアプローチとして進入継続ができるのではないかと思うのですが、どんなものでしょうか?

    思えばビジュアルアプローチをする航空機に対してでも 360 旋回を指示したりもできそうな気もします(AIM-J 672項)。

    しかし現にこんなことをやって良いのかどうか、ご意見を伺いたくよろしくお願いします。

    • pengin239 pengin239 より:

      esehさん
      コメントありがとうございます。

      さて、ご質問のAIM-j 664項については、調べたところAIM-jの創刊当初から記載があるようです。周回進入における管制官の指示に関しては、過去現実世界で何度も議論され、管制方式基準の改正提案もなされているようですが、現行の基準では改正はなされていません。
      したがって、現行の各種規定において明文化されたものはありません。

      以下、管制方式基準の改正提案や各種資料の内容を踏まえ、私見を述べさせていただきます。

      まず、本記事中の周回進入中の”Extend downwind.”の指示については、「周回進入中の航空機に対し周回進入区域を逸脱するような指示を発出してはならない」(VATJPN管制方式基準(Ⅱ)-7-(8)b.及び同項注)と明記されている通り、指示できません。

      問題となりますAIM-jの664項の記載について、周回進入を終了した後の飛行方法は、俗に”管制官の指示に従って行われるIFRによるVisual Flight”と呼ばれるものにあたります。これは、計器飛行方式の定義である航空法第2条第17項三において規定される「第一号に規定する飛行以外の航空交通管制区における飛行を第九十六条第一項の規定により国土交通大臣が経路その他の飛行の方法について与える指示に常時従つて行う飛行の方式」を法的根拠とし、定められた経路ではなく管制官の指示による経路を目視によって飛行するものです。視認進入や復行後のIFRによる場周経路の飛行は、定められた経路がないため同様の分類になります。一方、周回進入は目視によって進入を行うVisual Flightであるものの、周回進入区域とその区域内のMDAが公示されており、周回進入区域という特定の経路内を飛行するものですから、計器進入方式等定められた経路の飛行にあたります。

      話は戻りますが、このような事例として、周回進入区域外でブレイクし、その後場周経路を飛行するものが現実世界では多いようです。(※大阪国際空港を除く。)
      ”Extend downwind.”等VATJPN管制方式基準(Ⅲ)-6-(3)で規定される間隔設定の指示は場周経路を飛行する航空機に対して適用されるため、周回進入を中止し場周経路を飛行する場合はご指摘の通り指示可能です。
      ただし、突然何の前触れもなく”Extend downwind”等周回進入区域を逸脱する指示を発出することは、VATJPN管制方式基準(Ⅱ)-7-(8)b.に相反するため、各種規定をまともに理解しているパイロットならばおそらく困惑します。
      よって、事前に”Make left break, join downwind.”といったように周回進入としての取り扱いを終了する旨をきちんと伝えることが必要であると考えます。実際に、神戸空港ではRWY27への周回進入実施中、周回進入区域を厳守しなければ関西空港の航空機と干渉しますが、関連機がいない場合”Break at MIRAI. Report right downwind.”といった当該周回進入区域外でのブレイクを指示することがあります。

      また、AIM-j 672項に記載のある、視認進入を実施し場周経路を飛行する航空機に対する360°旋回等の指示は、先述のとおり規定上可能です。
      この点については、ターミナルレーダーの許可を得た上でできる旨、数年前に航空保安大学校の教官に確認を取っています。

      これらの指示を行う場合、関連機との管制間隔は明文化されたものがない以上、目視間隔を適用することが最も妥当であると考えられますが、目視間隔は原則として管制圏内で適用されるものですから、管制圏外で目視間隔を適用するために飛行経路を変更する場合、上位の管制官の許可を得なければなりません(VATJPN管制方式基準(Ⅱ)-2-(8)-(a)及び同項注)。
      また、たとえ管制圏内であっても、飛行経路の変更は他のIFR機の出発や進入順位に大きな影響を及ぼし安全で円滑な交通流の形成の妨げとなるため、同様に許可が必要であると考えます。

      長くなりましたが、要点をまとめますと
      ・周回進入を終了、または視認進入を実施し場周経路を飛行する航空機に対して、”Extend downind.”や”Make 360”等を指示することは可能
      ・周回進入を終了する際は、航空機に対しその旨明確に伝えること
      ・周回進入を終了する場合や視認進入中の航空機に対し”Extend downind.”等を指示する場合、また復行後IFRをキャンセルせずに場周経路を飛行する場合は、事前に進入管制業務を担当する上位管制機関との調整が必要

      余談ですが、ご指摘にありましたコンタクトアプローチへの切り替えに関しては、航空機からの要請もなく行うことになり、「管制官が示唆又は要請をしてはならない」(VATJPN管制方式基準(Ⅱ)-9-a.注)という規定に反するため、たとえブレイクする前であったとしても不適切であると考えます。なお、コンタクトアプローチは言うまでもなく、ノンレーダー空港においてのみ実施することができます(VATJPN管制方式基準(Ⅰ)-2b)。

      • eseh より:

        pengin239さま:

        esehです。ご回答どうもありがとうございました。大変良くわかりました。
        周回進入中の航空機については、周回進入空域から逸脱させることはできないので、”Make 360″ などさせるときには、レーダー席との調整のもとで周回進入を終了させるべきであるとの結論で、納得いたしました。
        どうもありがとうございました。

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