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2020年10月18日、DRZEWIECKI DESIGNより成田国際空港のシーナリーが発売されました。
VATSIMでは原則最新のチャートに基づいて地上走行の指示が発出されるため、成田ベースで飛ばれる方は購入を強く推奨します。(筆者の超絶個人的な意見)
また、成田を離発着するときにはFlight PlanのRemarksに使用しているシーナリーを記載するようにしましょう。
(2020年10月20日追記)
アジアの玄関口、成田国際空港。
様々な国の航空会社が就航している日本有数の巨大空港…。ですがランプコントロールがあったり、ゲートウェイがあったり(高輪ゲートウェイではないですよ)ローカルルールの量は日本一とも言えるでしょう。
現状、VATSIM上でリアル運用をする方は少ないですが、新しいシーナリーも発売され、この記事をきっかけにどんどん広まっていけばいいなと思っています。
このページでは出発の流れを解説します。
基本情報
滑走路
A滑走路(RWY16R/34L)
主に離陸に使用される。
有効長: 4000m
B滑走路(RWY16L/34R)
主に着陸に使用される。
有効長: 2500m
運用時間
成田空港は24時間空港ですが、24時から6時までの間は、緊急時またはやむを得ない場合を除き、離着陸が許可されません。
ですが、VATSIM上では特殊なイベントが開催されていない限り、24時間離着陸することができます。
「緊急時またはやむを得ない場合」とされるのは以下の場合のみです。
- 航空機に緊急事態が発生したとき。
- 乗務員または乗客に緊急事態が発生したとき。
- 捜索救助活動を目的として運行する航空機。
- 緊急のニュース収集活動を目的として運行している航空機。
- 台風の避難などの理由により、離陸又は着陸が不可避であると考えられるとき。
- 異常気象により緊急に給油する必要が生じたとき。
23時から24時の間はA滑走路(RWY16R/34L)のみが使用されます。
該当時間に飛行する航空機には騒音値などの制限が課せられていますが省略します。
注意点
FSX向けの成田空港のシーナリーはWCI(Wing Creation Inc.)から発売されているもののみです。
発売が7年前ということもあり、現在の誘導路との相違点がありまくり、位置ずれのない誘導路のほうが少ないのが現状です。
(ひどいところではWCIの誘導路が今は駐機場として使われていたりもします。)
DRZEWIECKI DESIGNよりPrepar3D向けのシーナリーが発売され、2020年10月現在最新の誘導路を走行できるようになりましたが、引き続き、FSX/X-Planeを使用している方との位置ずれにご注意ください。
交信例・解説
クリアランス
交信例(1)

Narita Delivery, JJP109.

JJP109, Narita Delivery, go ahead.

JJP109, request RWY16L. To New Chitose, FL370, SPOT 100A.

JJP109, Your departure RWY16L. Cleared to New Chitose Airport via TETRA EIGHT DEPARTURE KIMIN TRANSITION flight planned route. Maintain FL230. Squawk 2251.

JJP109, cleared to Chitose via RWY16L, TETRA EIGHT DEPARTURE KIMIN TRANSITION flight planned route. FL230. Squawk 2251.

JJP109, report when ready.

Wilco. JJP109.
滑走路の指定
成田空港では、 後述するランプコントロールがあるためか、デリバリーで滑走路を指定します。
B滑走路(34R/16L)から出発したい場合はデリバリーに要求しましょう。

To New Chitose, FL380. Bay 100C. Request RWY16L.

Standby runway assignment.
出発滑走路の指定はお待ち下さい。

Your departure RWY16L.
あなたの出発滑走路は16Lです。

Unable RWY16L due to traffic. Your departure RWY16R.
滑走路16Lは混雑のため使用できません。あなたの出発滑走路は16Rです。
管制官からB滑走路を指定されたものの、B滑走路からの離陸が困難な場合、デリバリーに伝えましょう。

Your departure RWY16L. Cleared to…

Cleared to…. Unable RWY16L departure, due to performance.
また、東京とは違い、SPOTを通報するのは「Go ahead」をもらってからのケースがほとんどのようです。
暫定高度
成田国際空港や東京国際空港など、一部の空港では暫定高度のみ通報します。
「Expect FL370」といわれなくても、巡航高度が書き換わったわけではありません。
また、成田空港では準備完了の通報をデリバリーで求められることがあります。
交信例(2)

Narita Delivery, JJP109, ready.

JJP109, roger. Contact Ramp Control 121.75.

121.75, JJP109.
プッシュバック
交信例

Narita Ramp Control, JJP109. Request pushback. SPOT100A.

JJP109, Narita Ramp Control. Pushback approved, face east.

Pushback, face east. JJP109.
ランプコントロールとは
日本では成田空港にしかない「ランプコントロール」があります。
これは国土交通省ではなく、成田国際空港株式会社(NAA)が運営しています。
レディオ・リモートとは違い、基本的には管制用語に沿った指示を発出することが多いようですが、そこは人それぞれです。

Commence pushback, face east.

Pushback, face east.

Pushback approved.
ジェットスター・ジャパンは成田空港でパワープッシュバックユニットという「後輪につけてステアリング操作はパイロットが行う」特殊な車を使用し、プッシュバックしています。
社員さんによっては「Power pushback」として承認する方もいます。

Power pushback approverd, face west.
プッシュバックの承認に方位の指定がなかった場合、TAXIING CHARTに従います。

このチャートはRJAA AD2.20 2.2~2.11で見ることができます。
地上走行(ランプ)
交信例(a)
CALL: JJP109
SPOT: 100A
RWY: 16L

JJP109, taxi.

JJP109, hold short of E3 Gateway, contact Ground 121.85.

E3 Gateway, contact Ground 121.85. JJP109.
交信例(b)
CALL: JAL829
SPOT: 61
RWY: 34R

JAL829, ready for taxi.

JAL829, taxi to S7 GWY, via T8 and T.

S7 GWY, via T8 to T. JAL829.
交信例(c)
CALL: JAL741
SPOT: 83
RWY: 34R

Narita Ramp, JAL741, request taxi.

JAL741, hold position. Switch to Ground 121.85.

121.85, JAL741.
GWY(Gateway)
基本的に、ランプコントロールではGWY(ゲートウェイ)までの地上走行の指示が発出されます。
GWYまでの距離が近い場合は、地上走行の指示を発出せずにGNDにハンドオフします。
GWYは成田ランプコントロール(NAA管轄)と成田グランド(国土交通省管轄)の境界線です。
絶対に管制官もしくはランプコントロールの許可なしにGWYを超えてはなりません。
また、タクシーの指示も社員さんごとに違います。

Taxi to E3 Gateway.

Commence taxi to E3 Gateway.
先程も記載しましたが、上記2つどちらであってもGWYを超えてはなりません。
地上走行(グランド)
交信例

Narita Ground, JJP109. E3 Gateway, information N.

JJP109, Narita Ground. RWY16L. New QNH 3015 inches, information O, wind 170 at 10. Taxi to holding B1 via C, B.

JJP109, taxi 16L, via C, B to B1. New QNH 3015.

JJP109, contact Narita Tower 118.35.

118.35, JJP109.
イニシャルコンタクト
成田ランプコントロールは、ATISや気象情報を管理しないため、受領報告はグランドにします。
また、接近する(ランプに指示された)GWYを通報します。
さきほども記載しましたが、羽田空港のROUTE 5のようなものが成田空港にはたくさんあります。
管制官はとくに必要のない限り、地上走行はこのルートを指示します。
ROUTE 1 (to RWY16R)
K, S6, C, W, W6 and A
ROUTE 2 (to RWY34L)
C, S7, K and A
ROUTE 3 (to RWY16L)
A, K, S6, C and B
ROUTE 4 (to RWY34R)
A, S, C, S7 and K
これ以外にもルート番号が振られていないものがあります。
詳細はRJAA AD2.20 2.2~2.11をご覧下さい。
離陸
交信例

Narita Tower, JJP109. Ready.

JJP109, Narita Tower. Wind 170 at 11, RWY16L, cleared for takeoff.

RWY16L, cleared for takeoff. JJP109
SPIDの運用
成田空港では日本で唯一、SPID(並行同時出発/SIMULTANEOUS PARALLEL INDEPENDENT DEPARTURES)を行っています。
SPIDの条件はRJAA AD2.22 (Ⅴ)に記載されている内容をざっくりと要約します。
実際に運用される際は、管制方式基準及びAIPを熟読することを強く推奨します。
航空機の条件
SPIDを実施する場合は、両機がRNAV1のSIDである必要があります。
特に上空で強い風が吹いている際に、滑走路34Rから離陸する場合、意図しない経路逸脱(FMSのROUTE DISCONTINUITYなど)を回避するために、適切な速度を設定する必要があります。
天候の条件
SPIDは、ウィンドシア・強い横風・雷雨などの悪天時は運用しません。
航空機への通知
SPIDが有効な場合は、ATIS等を使用して、航空機に通知する必要があります。
ATISが使用できない場合や、受領報告がなかった場合などは、管制官が航空機に通知します。

RJAA_ATIS
Simultaneous parallel departures (from runway [number] left and right are) in progress.
FMSの設定と用語
パイロットは、 設定したSIDの最初のウェイポイントまで、適切に繋がっていることを確認している必要があります。
パイロットに、FMSを正しく設定しているか確認するよう促すため、必ず次の用語を使用します。
離陸許可発出以前に確認させる場合

VERIFY INITIAL WAYPOINT [initial fix].
離陸許可と同時に発出する場合

RNAV TO [initial fix], RUNWAY [number], CLEARED FOR TAKE OFF.
このどちらか片方のみ必要で、両方を通報する必要はありません。
管制官から確認があった場合、管制官から確認された最初のウェイポイントが正しく設定されていることを必ず確認し、応答しましょう。

JJP109, verify initial waypoint BEAMS. Hold short of RWY16L.

Affirm, BEAMS. Hold short of RWY16L. JJP109.
もしくは

JJP109, RNAV to BEAMS. Wind 170 at 11, RWY16L, cleared for takeoff.

RNAV to BEAMS. RWY16L, cleared for takeoff. JJP109.
それぞれの滑走路からの最初のウェイポイントは次のようになっています。
滑走路 | 最初のウェイポイント | DEP周波数 |
34L | ARIES ASTRA (for PEDLA1) |
124.2MHz |
34R | BOXER | 119.6MHz |
16L | BEAMS | 119.6MHz |
16R | ASPEN | 124.2MHz |
FMSの最初のウェイポイントが上の表と一致しない場合は、管制官にすみやかに通報して下さい。
また、代替指示が発出されるまで離陸してはなりません。
間隔の確保
出発機同士が接近し危険な状態にならないよう、同時平行出発用不可侵区域(DNTZ)が設定されています。
このDNTZに航空機が進入しないよう、管制塔にいる専任の管制官が監視しています。
管制官は以下の場合、回避させる指示を発出する必要があります。
- 目視で、隣接滑走路の出発機に接近すると判断した場合
- 監視担当の管制官から、航空機が警戒判定区域(管制圏内のDNTZ)に侵入したとの通報があった場合
- APP管制官が以下のいずれかの状況であると判断した場合
- DNTZに侵入した
- DNTZに侵入するおそれがある
- 隣接滑走路からの出発機がDNTZに侵入した
- 隣接滑走路からの出発機がDNTZに侵入することが確実である
VATJPN上に於いてはざっくりと「近づきそうならば」とでも覚えておきましょう。
回避させる指示は以下のとおりです。

TRAFFIC ALERT, 〔repeat aircraft identification〕, TURN LEFT/RIGHT IMMEDIATELY, HEADING〔number〕(,MAINTAIN〔altitude〕).
逸脱している航空機が指示に応答しない場合や、DNTZに侵入した場合は、隣接滑走路の出発機にも指示を発出します。
管制官から回避するように指示があった場合、できるだけすみやかに指示に従う必要があります。
指示はTWRもしくはDEP周波数で発出されます。

JAL959, traffic alert, JAL959, turn right immediately, heading 010, maintain 4,000.

Heading 010, maintain 4000. Traffic in sight. JAL959.
初期上昇
交信例(1)

JJP109, contact Tokyo Departure.

Contact Tokyo Departure. JJP109.

Tokyo Departure, JJP109. Leaving 1600 for FL230.

JJP109, Tokyo Departure, radar contact.

JJP109.
周波数の省略
ATISにDEPの周波数が記載されている場合は、周波数が省略されることがあります。
ATISは必ず隅から隅まで確認しましょう。
高度の通報
DEPでは通常どおり高度を通報します。
これは成田空港に限った話ではありませんが、指定された高度もしっかりと通報しましょう。
交信例(2)

JJP109, turn left heading 360, vector to RADIX, maintain FL230.

Left heading 360, climb to FL230. JJP109.

JJP109, resume on navigation direct RADIX. Climb via SID to FL230.

Direct RADIX. Climb via SID FL230. JJP109.

JJP109, contact Tokyo Control 124.1.

1241. JJP109.
ヘディング指示や直行指示の復唱
「Left heading」や「Right turn direct」など、旋回方位の指定がある場合は、それも復唱し、必ずそれに従いましょう。
「Right turn direct」といったのにも関わらず「NDが左旋回のルートを出してきたので左に曲がりました」と言われたのは一度や二度ではありません。
とくに反対方向に曲がる可能性がある場合は、一度ヘディングで旋回してから直行しましょう。
これにて出発の流れは終了です。
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